【質問】硝子体出血の原因について教えてください

検査で右の眼球内に髪の毛のようなものが見られ、硝子体出血と言われました。 日が経つにつれ、摺りガラス状態になり、茶色い雲のようなものが現れて見えなくなったので、出血を取り除く硝子体手術を受け、 現在、視力はほぼ元に戻っています。糖尿病はありませんが、原因は何でしょうか? 老化現象であれば、左目にも起こるのではないかと心配です。
●70歳代・男性


【答】

硝子体は眼球の内腔を満たす透明なゼリー状の組織です。 その中に出血した場合を「硝子体出血」といい、突然、視野に黒い雲のようなものが流れるように現れます。 硝子体出血が起こる主な原因は、次の3つです。

①網膜の血管が引っ張られて破れる
硝子体は年を取ると変性して、眼球の前方に向かって収縮し、網膜から剥がれます。 これは「後部硝子体剥離」と呼ばれ、通常は50歳以上で起こる正常な老化現象です。 後部硝子体剥離が起こるときに網膜との癒着の強い部位では、網膜の血管が引っ張られて破れ、硝子体出血を起こすことがあります。 また、血管だけでなく、その周りの網膜も引っ張られて破れ、網膜に孔が開くこともあります。 これは「網膜裂孔」といい、放置すると裂孔を通って変性した硝子体が網膜の下に溜まり、 「網膜剥離」を起こします(⇒網膜裂孔・網膜剥離)。 網膜剥離を予防するためには、裂孔の周囲にレーザーを当て、網膜が剥がれないようにします。 後部硝子体剥離は加齢による変化なので予防はできません。 後部硝子体剥離が起きた際に、網膜裂孔ができていないかを眼科で調べてもらうことが大切です。

②網膜の血管の形が異常になって破れる
網膜の動脈の一部が瘤状に拡張する病気を「網膜細動脈瘤」といい、瘤が破れて硝子体出血を起こすことがあります。 瘤の原因は高血圧による動脈硬化なので、予防には血圧の管理が大切です。

③新生血管が破れる
網膜には正常では存在しないもろくて弱い異常な血管(網膜新生血管)ができ、それが硝子体の中に発育して破れると硝子体出血が起こります。 網膜新生血管ができる代表的な病気には、 「糖尿病網膜症」「網膜静脈閉塞症」があり、網膜新生血管の発生には網膜の虚血が関係しています。 治療では網膜の虚血に関連する 糖尿病高血圧などの病気の管理とともに、虚血網膜へのレーザー治療、 新生血管に対する抗血管性新生薬の硝子体への投与が行われます。 また、網膜の下にある脈絡膜に異常な血管(脈絡網膜新生血管)ができて出血すると、出血が硝子体の中に入り込んで硝子体出血を起こすことがあります。 代表的な病気は「黄斑変性症」で、治療には主に抗血管新生薬の硝子体投与が行われます。

①~③の原因によっては、もう片方の目に硝子体出血が起こることもあるので、定期的な検査をお勧めします。

(この答えは、2017年8月現在のものです。医療は日々進歩しているため、後日変わることもあるのでご了承ください。)