【質問】眼底出血について教えてください

半年ほど前に、89歳の母が眼底出血を起こし、視野と視力に障害があります。 高齢ということで手術はできず、服薬(止血薬)を1ヵ月間続けただけで、現在は経過観察中です。 眼底出血の原因、治療、日常生活の注意点などについて教えてください。 母は降圧薬を服薬中で、要介護1です。血圧の管理は家族が行っています。


【答】

「眼底出血」は、眼球内の光を感じる神経組織である網膜に出血がある状態です。 網膜に栄養を送る血管が破綻して生じます。原因や出血の程度によって治療は異なります。 お母さまは89歳で降圧薬を服薬中とのことですから、高血圧動脈硬化が関係する眼底出血が疑われます。 そのうち頻度が高いのは、「網膜静脈閉塞症」です。 網膜血管の静脈内に血栓が生じ、その静脈が支配する領域の網膜に出血が起こり、そこに対応する視野が欠損します。 血栓の生じた部位によって、「網膜中心静脈閉塞症」と「網膜静脈分枝閉塞症」があり、 いずれの閉塞症でも、網膜の中央の黄斑に出血や破綻した血管から漏れ出た血液成分が及ぶと、 黄斑がむくんで(黄斑浮腫といいます)視力が低下し、物が歪んで見えるようになります。 治療で網膜内の出血を除去することはできないので、自然に吸収されるのを待ちます。 しかし、障害された神経は再生しないので、出血が吸収された後でも網膜の障害がある程度残ります。 再出血などを抑制するためには、原因となる高血圧や脂質異常症などを治療したり、 循環改善薬を投与したりします。日常生活上の行動制限は特にありませんが、見えにくくなるので、転んだりしないように環境を整備してあげましょう。 血管閉塞部位が広範囲に残っていると、数ヵ月後に異常な新生血管が出現して、さらに重い視力障害に繋がることがあります。 その場合には、レーザー光線による網膜光凝固が行われます。 また、黄斑浮腫の程度によっては、浮腫を改善させる薬(抗VEGF薬やステロイド薬)を眼内に注射したり、局所に網膜光凝固を行ったりすることもあります。 以上のように、お母さまの場合は網膜静脈閉塞症が最も疑われますが、その他の眼底出血の原因として、 網膜細動脈瘤破裂、加齢黄斑変性による網膜下出血、 糖尿病網膜症などもあります。 担当医に病名や病状について詳しくお聞きになることをお勧めします。

(この答えは、2020年4月現在のものです。医療は日々進歩しているため、後日変わることもあるのでご了承ください。)