【質問】網膜中心静脈閉塞症で視力が低下しています
1年ほど前から右目の視力が悪くなり、眼科を受診したら「網膜中心静脈閉塞症」と言われました。視力は0.4です。
月に1回受診して、アイリーア注射やレーザー治療を受けています。
右目が、朝起きた時のような見え方なのですが、以前のようにスッキリするのはいつごろでしょうか。
治療には注射しかないのでしょうか。
●68歳・女性
●血圧と中性脂肪の薬を服用中
【答】
「網膜中心静脈閉塞症」とは、 網膜に分布する静脈の根元に血液の塊(血栓)が詰まり、堰き止められた静脈から血液成分が広範囲に網膜の中に漏れ出ることによって、 網膜に出血や腫れ(浮腫)が起こる病気です。 高血圧、動脈硬化、 糖尿病など、血管の閉塞に繋がる危険因子を持つ中高年、及び高齢者に多く見られます。 網膜の中心部である黄斑部に浮腫(黄斑浮腫)が起こると、全体的にぼやけた見え方となり、視力が0.3前後にまで低下します。 黄斑浮腫のために視力が低下した場合は、ルセンティス(ラニビズマブ)やアイリーア(アフリベルセプト)のような抗血管内増殖因子薬(抗VGEF薬)を 眼内に注射して浮腫を軽減させ、視力がさらに低下するのを防ぐ治療が最もよく行われています。 網膜の毛細血管が広範囲に詰まる重症型(虚血型)では、視力が0.1未満となり、治療が難しい 緑内障を合併することもあります。 この場合は、レーザーで網膜を広範囲に凝固する治療が行われます。 高血圧や動脈硬化が元になってこの病気を発症した場合は、種々の内服薬による薬物治療を行っても、 網膜の静脈内の血栓による閉塞を根本的に治癒することは難しいため、視力の低下を防ぐには抗VGEF薬を注射して黄斑浮腫をコントロールすることが重要です。 抗VGEF薬は即効性がありますが、個人によって効果に差があり、また、一般的に薬の作用期間は限られているために、 複数回にわたって注射を行っていると思われます。 現在でも注射後、自覚的に視力の改善がみられる場合は、注射による治療の継続をお勧めします。 なお、網膜中心静脈閉塞症は、稀に両方の目に起こることもあります。 高血圧や動脈硬化などの危険因子を持っている場合は、血圧コントロールやライフスタイルの改善にも気を付けてください。
(この答えは、2019年11月現在のものです。医療は日々進歩しているので、後日変わることもあるのでご了承ください。)