【質問】目のヘルペスで視力が低下しています
10年ほど前から右目にヘルペスができ、ドライアイもあります。
数ヵ月前より視力の低下や目の痛みがひどく、大学病院で「ヘルペスによる視力低下」と診断されました。
治療で目の痛みは軽減しましたが、角膜の奥(実質)の中心に傷があるので視力の回復は難しく、
角膜の手術はヘルペスの再発が予測されるため勧められないと言われました。
よい治療法はありませんか。
●84歳・女性
●ゾビラックス眼軟膏、ヒアレイン点眼薬、ムコスタ点眼薬を使用中
【答】
右目の視力低下は、「角膜ヘルペス」の再発が考えられます。 角膜ヘルペスは、単純ヘルペスウイルスの感染後、角膜に再発することによって起こる病気です。 再発を繰り返すうちに角膜に濁りや厚みの変化が起こり、視力が低下していきます。 角膜の最も外側の角膜上皮でウィルスが増殖する「樹脂状角膜炎」の場合は、抗ヘルペスウィルス薬のアシクロビル眼軟膏(ゾビラックス眼軟膏)が有効で、 この場合、視力はほとんど低下しません。しかし、上皮より奥の角膜実質で炎症が起こると、角膜がむくんだり白く濁ったりするため、視力が著しく低下します。 この状態にはアシクロビル眼軟膏を使いながら、ステロイド点眼薬で炎症を抑える治療を行います。 ステロイド点眼薬には強さが何段階かあり、重症度を判断して強さを選択することが大切です。 強力なステロイド点眼薬を使うと、角膜の濁りは早く良くなりますが、樹脂状角膜炎が再発してしまう場合があるからです。 角膜実質の炎症を何度も繰り返し、角膜中央の濁りによって視力が悪いままになってしまった場合は、角膜移植を行うこともあります。 ただ、移植をしても角膜ヘルペスの再発は起こりうること、また、ステロイド点眼薬の使用により視力が改善する場合があることなどから、 角膜中央の濁りの状態にもよりますが、角膜移植は積極的にはお勧めしません。 角膜ヘルペスは再発しやすいので、経過をみながら症状に応じた治療を行うことが大切です。 現在ステロイド点眼薬を使用していないのであれば、予防的にアシクロビル眼軟膏を継続する必要はないと思います。 この薬は長期使用により、角膜や結膜の上皮に障害を起こしやすいからです。 ドライアイもあるようなので、定期的な経過観察が可能であれば、 担当医と相談の上、アシクロビル眼軟膏はいったん中止してもよいと思います。
(この答えは、2020年1月現在のものです。医療は日々進歩しているので、後日変わることもあるのでご了承ください。)