ドライアイ

現在、目が異常に乾く『ドライアイ』が急増中で、 日本には、気付いていない人も含め2200万人ものドライアイ患者がいるといわれています。 これは、6人に1人という恐るべき割合です。 ドライアイとは目を覆う涙が乾燥し傷や障害が生じる病気で「目がショボショボする」「目が乾く」などの不快な症状があります。 ドライアイはたかが目が乾くだけと軽く見てはいけません。 放置すれば近視や老眼が早く進み、失明さえ招きかねません。 そもそも、目が乾くと表面に細かい傷ができるシステムになっています。その傷のところにバイ菌が付いたりすると、 傷から中に入ってくるので「角膜炎」とか、最悪の場合は「角膜移植」をしないと見えなくなってしまいます。 肌と一緒で、若い人は再生能力が高いのですが、加齢に連れて目の表面もだんだん年を取っていきます。 ドライアイは「自分は違う」と思っている「隠れドライアイ」の人も多いのも現状です。


■「ドライアイ」とは?

ドライアイは疲れ目の重大原因

私たち現代人は、コンピューターやテレビゲーム、携帯電話の操作、車の運転、読書などで目を酷使しています。 こうして目を使い続けていると目は疲れ、その結果、「目の奥が痛む、目がショボショボする、目が重たい感じがする」 といった不快な症状が現れてきます。ふつう、目の疲れは、一晩寝れば取れるものです。 しかし、一晩寝ても目の疲れが取れず、不快な症状がずっと続く場合は、重度の疲れ目、医学的にいう「眼精疲労」 が疑われます。眼精疲労を訴える人は年々増え続けていますが、その中でも最近、特に急増しているのが 「ドライアイ」によるものです。ドライアイとは、目の表面を覆う涙の分泌量が減って、眼球が乾く病気です。 そして、眼精疲労とドライアイには密接な関係があり、目が疲れるとドライアイになりやすく、 ドライアイになれば眼精疲労になりやすいのです。眼精疲労を訴える患者さんの半数以上にドライアイの症状が見られるという報告もあります。

ドライアイの主な原因としては、眼球を覆っている涙が減ってしまうことが挙げられます。 涙の減少は病気による場合もありますが、近年問題だと思われるのは、パソコンやスマートフォンを見続けているために瞬きが減っていることです。 パソコンなどの画面に使われている青色LEDは波長が短いため光が散乱し、ちらついて見えます。 このため、ピントを合わせる毛様体という筋肉が緊張して瞬きが減り、瞼の刺激で出ていた涙の量が減少します。 また、瞬きによって、目の表面全体に涙が行き渡りますが、これもできなくなって目が乾いてしまいます。

涙は涙腺から分泌され、角膜(黒目を覆う透明の膜)に酸素や栄養を補給したり、目のごみや老廃物を洗い流したり、 細菌などの異物の侵入を防いだりする重要な役割を果たしています。 さらに、目の表面を潤わせて、瞬きをしやすくするのも涙の役目です。 ところが、涙の分泌量が減ると、こうした涙の働きが衰えて目の表面が乾燥し、眼精疲労の症状が現れてくるのです。 涙の分泌量が減る最大の原因は、瞬きの回数が減ることです。 涙は、瞬きの刺激によって分泌が促され、また、瞬きすることによって、目の表面全域にまんべんなく行き渡っていきます。 私たちは通常、1分間に10~20回の瞬きをしています。ところが、パソコン操作や読書などで、一点を凝視し続けていると、 瞬きの回数が極端に減って、ひどい人では1分間に6回以下にまで減ることがあります。 そうなると目の表面に潤いがなくなり、やがては角膜の表面に傷がつきやすくなったり、 物がはっきりと見えなくなったりするのです。


■3人に1人はドライアイ

ドライアイは、体質的なことが原因となって起こる場合もありますが、急増している背景には、 現代人の生活環境が深く関係しています。 前述したように、まずパソコンやスマートフォンなどの使用によって、瞬きの回数が減っていることがあげられます。 ある調査によると、パソコンを長時間使うことの多い社会人の3人に1人はドライアイになっている、 と報告されています。そのほか、エアコン完備の環境も要注意。空気が乾燥しすぎるため、目も乾きやすくなるからです。 また、夜型の生活習慣も、ドライアイに関係しています。私たちの体は、日中に活動し、夜は休息を取るために 休息するようにできています。涙も、夜になると分泌が少なくなり、目が乾きやすくなる仕組みになっています。 昼夜逆転の生活を送っていると、本来は涙の分泌量が少ない時間に目を酷使することになり、知らず知らずのうちに 目が乾きやすくなるのです。また、ストレスもドライアイを招きます。過剰なストレスによる緊張で瞬きの回数が減り、 涙の分泌量も減ってしまうのです。

ドライアイは、放置すると眼精疲労を招き、日常生活に支障が出てくるだけではありません。 近くのものや遠くのものにピントが合わなくなって、近視や老眼を進めるといった視力低下を引き起こす場合もあります。 また、角膜に傷が付くと、細菌などが侵入して、さまざまな感染症を引き起こす恐れもあります。 治療が遅れると、角膜の細胞がはがれて、最悪の場合、失明ということにもなりかねません。


■ドライアイの自己チェック

ドライアイが厄介なのは、初期には自覚症状がほとんどないことです。 そのため、自分がドライアイになっていることに気づかずにいて、症状を悪化させてしまう人もいます。 そこで、まずドライアイになっているのかいないのかを自己チェックしてみましょう。 下記のリストに示す12項目は、いずれもドライアイで起こりやすい症状です。 当てはまる項目をチェックしてその数を合計してください。 チェックした数が2~7個の人は、ドライアイの可能性があります。 8個以上の人は、ドライアイの疑いが濃厚なので早めに眼科を受診しましょう。

①目が疲れやすい
②目が乾いた感じがする
③目がゴロゴロする、ショボショボする
④光がまぶしく感じられる
⑤目が痛い
⑥目が赤くなる
⑦物がかすんで見える
⑧白っぽい目ヤニが出る
⑨目が重たい感じがする
⑩理由もなく涙が出る
⑪朝、目があけにくい
⑫目が熱っぽい

では、それぞれの項目について説明しましょう。

①目が疲れやすい
涙の役割の一つに、角膜に酸素や栄養を運ぶ働きがあります。ドライアイで涙の分泌量が減ると、 酸素や栄養が行き渡らなくなり、目が疲れやすくなります。

②目が乾いた感じがする

③目がゴロゴロする、ショボショボする

④光がまぶしく感じられる
②③④はいずれもドライアイの代表的な症状です。涙の分泌量が減ると、乾いた感じがしたり、 目に入ったゴミを目から洗い流せなくなって、ゴロゴロしたりするのです。 また、角膜の表面がただれて、弱い光でもまぶしく感じるようになります。

⑤目が痛い

⑥目が赤くなる
⑤⑥は、ドライアイで涙が不足すると、角膜に酸素や栄養が行き渡らず、角膜が傷つきやすくなったり、 傷の修復力も衰えるため、痛みが出ます。また、目の表面とまぶたがこすれて、目が赤くなることがあります。

⑦物がかすんで見える
実は、涙は目の乾燥を防ぐため、ムチン(粘着性のたんぱく質)層・涙液層・油層の3層からなっています。 ドライアイになると、これらの層に含まれる成分が不足し、角膜がただれたりして、 画像をしっかりと捉えることができなくなります。その結果、物がかすんだり、ぼやけて見えるようになったりします。

⑧白っぽい目ヤニが出る
涙は、角膜や結膜から老廃物を洗い流す役目も果たしています。 涙の量が不足すると、目頭あたりに白っぽい老廃物がたまるようになります。

⑨目が重たい感じがする
涙の量が減ると、目の表面とまぶたが滑らかに動かなくなり、重たく感じます。

⑩理由もなく涙が出る
ドライアイになると、涙の量が増える場合があります。これは、目が乾くことで目の表面が刺激を受けて、 通常よりも多くの涙が分泌されるようになるのです。

⑪朝、目があけにくい
ドライアイの人は、朝起きたときに涙が出にくいので、瞬きをするときもゴロゴロ感があります。 その違和感を避けるために、無意識のうちに目が開きにくくなります。

⑫目が熱っぽい
涙の量が減ると、目の温度が上昇し、目の表面温度が高くなることがあります。

もしこのチェック表でドライアイの可能性があるとわかった人は、早めに眼科を受診して治療に努めましょう。 また、ドライアイを招きやすい生活習慣の改善も大切です。