中心性漿液性網脈絡膜症
『中心性漿液性網脈絡膜症』とは、網膜の中心部(黄斑部)に水が溜まるために、視野の真ん中が見えにくくなる病気です。 30~40歳代の働き盛りの男性に多く、精神的ストレスとの関係も指摘されています。 「視力が低下する」「視野の中心部が暗く、見えづらくなる」 「正常な方の目で見るのと比べて、物が歪んで見えたり、小さく見える」などの症状が起こります。 自然治癒することが多いため、特に治療を行わずに、様子を見る場合もあります。 ただし、症状が強かったり、日常生活に差し障りが出ている場合などは、薬物療法やレーザー治療が行われます。
■どんな病気か
網膜の裏側に水(奨液)が溜まる病気
「中心性漿液性網脈絡膜症」は、網膜の中心部である「黄斑部」の裏側に、 水(奨液)が溜まる病気です。俗に「中心性網膜炎」とも呼ばれます。 男性に多く、特に30~40歳代の働き盛りの人によく見られます。たいていの場合は自然に治るのですが、 再発するケースもあります。
●症状
中心性漿液性網脈絡膜症は、片方の眼だけに起こり、両方の眼に同時に起こることはまずありません。 代表的な症状は「視力の低下」です。片方の眼だけ視力が落ちるため、「両方の眼で見たときに、違和感を覚える」 ことがあります。 また、「ものを見ようとすると、真ん中が暗くかすんで見えにくい」のも特徴です。 「正常な方の目で見るのと比べて、物が歪んで見えたり、小さく見える」ことも、しばしばあります。
●病気が起こる仕組み
網膜の外側には、血管がたくさん分布している「脈絡膜」という膜があります。 通常は、脈絡膜の血管から水がしみ出しても、網膜のいちばん外側の層に当たる「網膜色素上皮細胞」が、 脈絡膜からの水漏れを防いでくれます。ところが、何らかの理由で網膜色素上皮細胞が傷んでしまうと、 脈絡膜の血管からしみ出た水が網膜の裏側に入り込み、黄斑部の網膜が浮き上がります。 これが中心性漿液性網脈絡膜症です(左図参照)。この病気が起こる原因はよくわかっていませんが、 精神的ストレスが引き金になるともいわれています。
■検査と治療
薬物療法やレーザー治療が行われるケースもある
●検査
まず、「眼底検査」で網膜を観察し、黄斑部の腫れなどをチェックします。 次に「蛍光眼底造影」で、蛍光色素の漏れている部位の有無を確認します。 網膜色素が網膜の裏側に漏れ出します。通常はこの2つの検査結果をもとに診断されます。 また、「光干渉断層計」で、網膜や脈絡膜の状態を観察することもあります。
●治療
自然治癒することが多いため、特に治療を行わずに、様子を見る場合もあります。 ただし、症状が強かったり、日常生活に差し障りが出ている場合などは、次のような治療が行われます。
- ▼薬物療法
- 「循環器改善薬」や「ビタミン剤」を服用することで、水漏れした網膜色素上皮細胞の修復を助けます。
- ▼レーザー治療
- 網膜色素上皮細胞の傷んだ部位をレーザーで焼いてくっつけ、水漏れを止めます。 ただし、傷んだ部位が黄斑部の中心から離れており、かつ網膜の腫れが治りにくい場合などに限って行われることが 多いようです。
この病気自体は自然に治ることもありますが、似たような症状が出る病気がほかにもあります。 何らかの症状が現れたら、他の病気との鑑別のためにも、眼科を受診することが大切です。