網膜動脈閉塞症
『網膜動脈閉塞症』とは、網膜の動脈が突然詰まる病気です。 詰まる部位によって大きく「網膜中心動脈閉塞症」と「網膜動脈分枝閉塞症」の2種類に分けられます。 網膜に酸素や栄養が送られなくなるため、視野全体、あるいは視野の一部が急激に見えづらくなります。 お年寄りでは、動脈硬化が原因とされています。
■どんな病気か?
頸動脈などにできた血栓が網膜の動脈を詰まらせる。
『網膜動脈閉塞症』は、網膜の動脈が詰まるもので、ほとんどの場合、片方の目だけに起こります。 加齢による動脈硬化との関係が深い病気です。全身の動脈硬化が進むと、「頸動脈」などに「血栓」ができやすく なります。網膜動脈閉塞症は、こうした血栓が何かの拍子に剥がれて血流に乗り、網膜動脈を塞ぐことで起こると考えられています。
●タイプと症状
動脈の詰まった部位によって、主に2つのタイプに分けられます。
- ▼網膜中心動脈閉塞症
- 視神経乳頭にある、網膜動脈の幹の部分(網膜中心動脈)が詰まったものです。 ここで血流が途絶えると、網膜に酸素や栄養が供給されなくなります。 照明を消したかのように、いきなり視野全体が暗くなります。
- ▼網膜動脈分枝閉塞症
- 中心動脈から枝分かれした動脈が詰まったものです。 網膜の血流の途絶えた部位に障害が起こり、視野の一部がかすんだり、見えにくくなります。
●「一過性黒内障」に注意
動脈を詰まらせた血栓がすぐに溶けたり、網膜動脈に起きた痙攣が治まったりして、閉塞した網膜動脈が、 短時間のうちに再開通することがあります(一過性黒内障)。症状もすぐに消えてしまうため、放置する人も多いのですが、 何度も繰り返すうちに網膜動脈閉塞症を招きやすくなるので軽視はできません。
■検査と治療
発症から90分以内に治療を受ける必要がある
●検査
まずは「眼底検査」で、網膜の色の変化などを確認します。さらに、「蛍光眼底造影」を行って、 血流が途絶えた範囲を明らかにします。
●網膜中心動脈閉塞症の治療
網膜中心動脈閉塞症では、緊急の治療が必要となります。一般に、発症から90分以内に治療を受けないと、 視力回復は望めないとされています。 治療としては、眼圧を下げて血流を促進するため、瞼の上から指で「眼球マッサージ」をしたり、 房水を抜く「前房穿刺」などが行われます。 また、「血管拡張薬(プロスタグランジン製剤)」の点滴も行われます。 これは血管を広げることで、血栓を血管の末端に移動させ、障害を最小限に抑えるためのものです。 血栓を溶かす「血栓溶解薬」が使われることもありますが、「脳出血」などの命に関わる病気を招く危険性もあるため、 慎重に選択されます。
●網膜動脈分枝閉塞症の治療
プロスタグランジン製剤の点滴や内服薬が用いられます。加えて、ビタミン剤が使われることもあります。