【質問】膀胱憩室が大きくなっています
20年以上前より「前立腺肥大症」です。
手術は嫌なので、薬による治療を受けています。前立腺の大きさは56mLです。
先日のエコー検査で「膀胱の左右にある憩室が大きくなっている。さらに大きくなると手術が必要」と言われました。
手術をしないとどうなるのでしょうか。
●75歳:男性
●既往症:鼠径ヘルニア
【答】
「膀胱憩室」とは、何らかの原因で膀胱の筋肉の一部が弱くなり、膀胱の壁から膀胱の粘膜の一部が外側に突出し、 膀胱の横に尿が溜まる袋が、膀胱とは別にできた状態をいいます。 生まれた時からみられる場合もありますが、前立腺肥大症などによる重度の排尿障害があると、排尿時に膀胱に過度の負担がかかるためにできることがあります。 膀胱憩室があると、排尿によって膀胱内が空になっても、憩室内に尿が残ります(憩室内残尿)。 そのため、一度排尿したにもかかわらず、憩室内の尿を排出するために、もう一度排尿しなければならないようになります(二段排尿)。 また、憩室内残尿が多くなると、憩室内に結石ができたり、感染症を繰り返したりすることもあります。 憩室との因果関係ははっきりしていませんが、 憩室内に膀胱癌が発生することもあります。 膀胱憩室は必ずしも治療が必要なものではありませんが、一般的に、①憩室内残尿が多い、②憩室内に結石ができている、 ③憩室が原因で感染症を繰り返すなどの場合は、手術が検討されます。 治療は、憩室の原因になっている前立腺肥大症などの病気を優先しますが、憩室の状況によっては憩室そのものの治療が必要になる場合も少なくありません。
ご質問者の場合は、前立腺肥大症による排尿障害が、膀胱憩室の原因になっている可能性があります。 前立腺が56mLと大きいので、現在行われている薬物治療の効果を再評価してもらい、手術が必要かどうかについて、 もう一度担当医と相談した方がよいかもしれません。 なお、ご質問者は鼠径ヘルニアの既往があるようですが、一般的に前立腺肥大症が重症の場合は、お腹に力を入れて排尿するため(腹圧排尿)、 鼠径ヘルニアになりやすいと考えられています。 ご質問者がこれに当てはまるかどうかわかりませんが、再度、排尿障害のチェックを受け、 担当医が「排尿障害が強い」と判断した場合は、前立腺肥大症や膀胱憩室の手術は必要かもしれません。、
(この答えは、2020年5月現在のものです。医療は日々進歩しているため、後日変わることもあるのでご了承ください。)