貧血

貧血とは「血液中の赤血球数、またはヘモグロビンの濃度が低下している状態」のことです。 ヘモグロビンとは赤血球の中にある赤い色素で、肺で取り込んだ酸素はこのヘモグロビンと結合し、赤血球によって全身に運ばれます。 赤血球やヘモグロビンが減少すると、全身の臓器や組織に十分な酸素が行き渡らなくなり、体中が酸素不足の状態に陥ります。 そして臓器や組織の働きが低下し、全身に様々な影響が及びます。 一方で、私たちの体には不足した酸素を補おうとする仕組みが備わっています(代償作用)。 その一つが心臓の働きで、心臓は拍動を速めてより多くの血液を流そうとします。 これにより必要な酸素はある程度確保できますが、心臓にとっては大きな負担となります。




■貧血の症状

●初めは息切れや疲労感

貧血が起こると、立ちくらみやふらつきよりも、まずは息切れ疲労感が現れます。 少し動いただけでも、体が酸素不足の状態に陥るからです。 「階段を上ると息が切れる」「なんとなく疲れやすい」などの症状は、心臓や肺の病気でも起こりますが、貧血が隠れている場合もあるのです。 貧血が進むと、立ちくらみやふらつきなども起こるようになります。 「歳のせい」などと思って見逃されやすい症状ですが、貧血はもちろん、他の原因の場合も注意が必要なので、 これらの症状があったり、続いている場合は、医療機関を受診してください。


●症状を自覚しないこともある

貧血が少しずつ進んでいる場合、体が慢性的な酸素不足の状態に慣れてしまうので、貧血の症状を自覚しにくくなります。 例えば、ヘモグロビン濃度が貧血の判定基準の半分近くになっていても、ほぼ問題なく生活している人もいます。 逆に、貧血が急に進んだ場合は、判定基準をほんの少し下回った程度でも、ふらついて歩けなくなる場合があります。 つまり、貧血の重症度と症状の強さは必ずしも一致しないのです。 ただし、貧血がある場合は、体が酸素不足の状態であることには違いなく、貧血が改善されない限り、心臓には負担がかかり続けます。 そのような状態をそのままにしてしまうと、やがて心臓が疲弊してしまい、 心不全を引き起こす危険もあります。 症状を自覚しない、あるいは症状が軽いといって、貧血を軽く見てはいけないのです。


■貧血を見逃さない!ヘモグロビン濃度をチェックしよう

貧血があっても、それに気づいていない人は少なくありません。 特に、日常動作がゆっくりしている高齢者の場合は、動悸や息切れなどの典型的な貧血の症状が現れにくく、貧血が見逃されやすいのです。 また、心臓や肺などの病気がある場合は、それらの病気で起こっている症状と区別しにくいこともあります。 そのため、貧血があるかどうかは、症状よりも血液検査で判断することが大切です。 健康診断を受けている人は、その結果で貧血かどうかがわかります。 貧血と判定された場合は、特に症状がなくても内科や血液内科を受診し、貧血の原因や状態などを詳しく調べることが大切です。


■たちくらみ・ふらつきを起こす主な原因

▼加齢による筋力や感覚の低下
▼貧血
▼心身の疲労・ストレス
▼脳血流の低下
・起立性低血圧
・自律神経の不調
不整脈(徐脈・頻脈)など
▼平衡感覚の障害
・加齢によるもの(加齢性平衡障害)
・内耳の病気(良性発作性頭位めまい症など)
脳の病気(小脳の梗塞や出血など)
▼持病に伴うもの
糖尿病
腎臓病
・甲状腺機能低下症(橋本病)など
▼精神疾患
鬱病
不安障害
▼薬の影響
・睡眠薬、降圧薬、抗鬱薬など
▼病気や体調の変化に伴う全身症状
・発熱
・脱水
熱中症

【脳貧血は貧血じゃない?】
急に立ち上がったときなどに立ちくらみやふらつきが起こると「脳貧血」という言葉を聞くことが多いと思います。 ”貧血”とありますが、これは俗称で、血中のヘモグロビン濃度が低下する貧血とは全く別のものです。 脳貧血の主な原因は「一時的な血圧の低下」です。血圧が急に低下して脳の血流量が減少すると、脳が酸素不足の状態になり、 立ちくらみやふらつきなどの症状が現れるのです。「急に立ち上がる(起立性低血圧)」「服薬(降圧薬、利尿薬、睡眠薬など)」「脱水(飲酒、発熱、熱中症)」 などが原因で起こります。 脳貧血は、日常生活での工夫や対策によって、ある程度防ぐことができます。 起立性低血圧の多くは自律神経の不調によって起こるので、十分な睡眠をとって規則正しい生活を心がけ、 疲れやストレスをためないようにします。起き上がったり立ち上がったりするなどの動作は、できるだけゆっくり行うとよいでしょう。