■高齢者の不眠対策
病気の治療や生活習慣の改善の対処
早朝覚醒と中途覚醒の対処法には、主に「原因となる病気の治療」「生活改善」の2つがあります。 睡眠を妨げる病気がある場合は、まずその治療を行います。 中でも、糖尿病と高血圧は、不眠に深いかかわりがあり、不眠があると、これらの病気を悪化させてしまうのです。 病気の治療と不眠の治療を並行して行うことが大切です。
高齢者において不眠が増加するのは、なにも脳の老化や病気だけが原因ではありません。
生活習慣あるいは生活のリズム、つまり、昼間しっかり起きていて頭や体を十分働かせているかどうか
が重要な要素となります。
ですから、高齢期の不眠には、生活習慣を見直すことが解決法になる場合も多いのです。
具体的な不眠対策としては、
①就寝時刻と起床時刻を規則正しくする。
②昼間はできるだけ積極的に体を動かし、頭もしっかり働かせウツラウツラしない。
③昼寝をする場合は、午後の早い時刻に行い、30分から1時間以内にとどめる。
④周囲の環境を日中は明るく、夜は暗く静かになるよう配慮する。
⑤夕刻以降にカフェイン(コーヒー、紅茶、日本茶)を摂取するのを控える。
などの点に気をつけるようにします。
認知症で不眠や夜間の徘徊などで問題のあった人に、上記の①と②を守るように指導した場合と、 指導しなかった場合を比較した調査があります。その調査によると、指導を受けた人の睡眠は、 著しく改善したと報告されています。 例えば、就寝時刻を決めたとおりに習慣付けた場合は、そうでない場合に比べ、 改善率(”よい睡眠がとれた”という自己申告率)が2.2倍に上昇し、散歩などの軽い運動を 習慣化した場合は、そうでない場合に比べ改善率は12.6倍にもなっていたのです。
また、別の研究から、午後1時~3時の間に30分程度行う短い睡眠は、脳の疲労回復に極めて有効で、 認知症の発症を1/5程度に減らすと報告されています。逆に、1時間以上の昼寝は認知症の危険性を増す とも言われています。いずれにしても、昼間は頭と体をよく使い、夜は就寝時刻を決めて ぐっすり眠るよう習慣付けることが大切です。