糖尿病の検査・診断
糖尿病の検査・診断方法には、「空腹時血糖値検査」、 空腹時にブドウ糖液を飲み、血糖値の変化を調べる「ブドウ糖負荷試験」、 血液中の赤血球にブドウ糖がどれだけ付着したかを調べる「ヘモグロビンA1c検査」があります。 空腹時血糖値検査は、10時間以上絶食してから、翌朝に血糖値を測る方法で、健康診断などで一般的に行われる方法です。 ブドウ糖負荷試験は、10時間以上の絶食後、75gのブドウ糖液を飲み、30分後、1時間後、2時間後に採血し、血糖値の変化を調べます。 ブドウ糖負荷試験は、医療機関や健診センターなどに申し込んだり、予約して受けます。
■糖尿病の診断基準
血液中に含まれるブドウ糖のことを血糖といいます。健康な人の場合の血糖は80~100mg/dL程度です。
血糖値は1日の中で変化しており、食事の後には血糖値が上昇し、普通、2時間以内に正常に戻りますが、
慢性的に血糖値が高くなっている状態が「糖尿病」です。
糖尿病の診断方法には、空腹時にブドウ糖液を飲み、血糖値の変化を調べる「経口ブドウ糖負荷試験」、
血液中の赤血球にブドウ糖がどれだけ付着したかを調べる「ヘモグロビンA1c検査」の他、
「フルクトサミン検査」「グリコアルブミン検査」「1,5-AG検査」などがあります。
日本糖尿病学会ではガイドラインとして、次のように判定します。
- ▼「糖尿病型」
- ブドウ糖負荷試験の試験前(空腹時血糖)値126mg/dL以上、2時間値200mg/dL以上のどちらか、または両方に該当する場合
- ▼「正常型」
- 試験前値が110mg/dL未満、2時間値140mg/dL未満の両方に該当する場合
- ▼「境界型」
- 糖尿病型にも正常型にも属さないもの。 いわゆる「糖尿病予備軍」と呼ばれ、 血糖値が高く糖尿病に移行する可能性が高まります。
■糖尿病の血液検査「HbA1C検査」
「HbA1C(ヘモグロビン・エー・ワン・シー)検査」とは、血液中のブドウ糖が、
赤血球中のヘモグロビンという成分に結合するとグリコヘモグロビンができ、
これがどれくらいの割合で血液中にあるかを調べる検査で、
血糖コントロールの善し悪しを判断する指標として、最も注目される検査です。
食後血糖値や空腹時血糖値は、採血時の血糖コントロール状態を反映するもので、
数日間の食事の内容や運動量、生活の状態で大きく変わってきます。
しかし、HbA1C値を見れば、過去1~2ヶ月間の血糖コントロールの状態を知ることが出来ます。
数値が高いほど採血時以前の血糖値が高かった事を示し、6.5%以上であると食後の血糖値はほぼ200mg/dL以上になります。
耐糖能正常者(糖尿病ではない人)は4.3~5.8%程度です。
HbA1C検査は血糖コントロールに関する検査の中で、一番長い間のコントロール状態をあらわす指標です。
糖尿病は高血糖状態が続くことで起きる合併症が怖い病気ですから、
長期間のコントロール状態がわかるということは、治療上、非常に大きな意味をもっています。
■糖尿病の血液検査「経口ブドウ糖負荷試験」
経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)は、糖尿病の診断方法の一つです。 糖尿病が疑われる患者に対し、短時間に一定量のブドウ糖水溶液を飲んでもらい、 一定時間経過後の血糖値の値から、糖尿病が存在するかどうかを判断する方法です。
経口ブドウ糖負荷試験では、一般に10時間以上絶食し、食事をせずに75gのブドウ糖だけが溶けたジュースのような甘い液体を飲みます。
以前は施設により、50gや100gのブドウ糖を用いることがありましたが、現在では、WHOの基準に従い、75gのブドウ糖を負荷します。
そして、ブドウ糖をとる直前、30分後、1時間後、2時間後、場合によっては3時間後の血糖値とインスリンの値を測ります。
検査中は安静を保ち、喫煙と飲食を避けます。
ただし、この検査は、血糖値を意図的に上昇させる試験であるため、
既に本試験の前に行っている空腹時血糖値や随時血糖値によって糖尿病型と診断されている患者には、
この試験を施行してはならないとされています。
理由は、あらかじめ糖尿病とわかっていれば負荷試験で血糖の値が跳ね上がることはわかっているので、糖尿病患者に行うのは危険だからです。
この検査は、いわゆる糖尿病予備群や隠れ糖尿病のような糖尿病かどうか迷うような初期の場合の診断にのみ使用する試験です。
「糖尿病型」と判断される基準は、2時間後の血糖値で200mg/dL以上です。
また、ブドウ糖負荷試験の結果によっては、空腹時血糖値が正常型でも、「境界型」や「糖尿病型」と判定されることがあります。
■糖尿病の尿検査「尿糖検査」
血糖値が一定以上の高さになると、ブドウ糖が尿に漏れ出てくるようになるので、 尿を採取して、尿の中のブドウ糖(尿糖)の有無を調べ、尿糖が出ていれば、糖尿病を疑います。
■家庭で行う血糖値測定
家庭で血糖値を測定する、「血糖値自己測定器」 という器械があります。 指先などから少量の血液を採取するだけで、簡単に血糖値を測定できます。 家庭で血糖値を測定すると、食べた物や運動などによって自分の血糖値が変動する様子がわかります。 インスリン療法を行っている人には、家庭での血糖値測定に健康保険が適用されますが、それ以外の人には適用されません。 しかし、家庭での血糖値測定からは多くの有用な情報が得られるので、定期的に測定してみるとよいでしょう。
■その他
2008年6月、日本糖尿病学会によって、空腹時血糖値の正常型の中に新たな区分が提唱されました。 それによると、これまで正常型に含まれていた100~109mg/dLを、新たに設けられた「正常高値」として取り扱うようになりました。 正常高値が設けられた理由の一つに、空腹時血糖値が100~109mg/dLの人の25~40%は、 ブドウ糖負荷後2時間が境界型や糖尿病型に属していることが挙げられます。 正常高値を設けることで、そうした人たちを見逃さないようにしようとしているのです。 100mg/dLという基準は、2008年4月に始まった「特定健康診査」でも利用されています。 空腹時血糖値が100mg/dL以上になったら、生活習慣の改善に取り組んでください。