バレリアン

バレリアン(和名:セイヨウカノコソウ)』は心と体を落ち着かせたりグッスリ眠らせたりする効果があり、 不安障害に有効な抗不安薬などに匹敵する効果があるともいわれています。 バレリアンは、ドイツのコミッションE(薬用植物の評価委員会)では 不眠症、 精神不安などに対する使用を承認しており、精神的ストレスを緩和し、寝つきが悪い方によいとされています。 バレリアンは、高い鎮静作用があるためヨーロッパでは、 不安神経症の治療にも用いられています。 その中心成分として、セスキテルペンカルボン酸類が働き、神経症、不安、ストレス、不眠症だけでなく、 その鎮静作用により、筋肉疲労、胃痛にも大変効果があり、副作用の心配もなくご利用いただけるハーブです。


■「バレリアン」とは?

バレリアンとは「健康になる、強くなる」という意味

バレリアン 「バレリアン」はヨーロッパからアジアにかけての原産ですが、 現在は北米各地に帰化している植物で、成長すると1.5mほどの丈になります。 バレリアンの名前の由来はラテン語のValereで「健康になる」、「強くなる」の意味で、 乾燥した根は、マタタビのようにネコ が好む強い香り(吉草酸、線香の香りと同じ)を発します。 バレリアンには特有の匂いがあって、人によっては不快を感じさせます。 ところがこの匂いは鼠や猫を引きつけるといわれ、ドイツの民話としてよく知られたハーメルンの笛吹きは、 バレリアンをポケットに忍ばせていて、この匂いに引きつけられた鼠が笛吹きのあとを追ったという民話の解釈を J.BrittonとT.Kricherが"The complete Book of Home Herbal Remedies"(1998)で紹介しています。



■期待される効能

睡眠障害(不眠症)不安感の改善。


■作用メカニズム

有効成分は、テルペン類や揮発性油分、アルカロイド類などです。 これらの有効成分が共同して中枢神経に作用し、γ-アミノ酪酸(ギャバ)の働きを介して効果を発揮すると推定されています。 バレリアンは、脳が興奮を抑えたり過度な刺激を緩和させたりするのに使うアデノシンという神経伝達物質に作用することにより、不安を軽減させます。 最新の研究で、バレリアンの成分が脳のアデノシン受容体と結合し、活性化することがわかりました。 アデノシンには鎮静効果があり、 睡眠障害を改善する力があります。 バレリアンは、アデノシンの量を増やすことで同じリラックス効果をもたらします。 (カフェインはアデノシン受容体を阻害してしまうため、コーヒーを飲みすぎたりすると落ち着きがなくなったりイライラしたりすることがあります。


■科学的根拠

バレリアンに関する臨床試験としては、連続投与(8~28日間)による研究と、非連続投与(1~4回投与)による研究が行われており、9つの論文が報告されています。 そのうち、5つの臨床試験において、バレリアンの不眠症などに対する有効性が認められました。 特に、100名以上の被験者を対象にした2つの臨床試験では、いずれもバレリアンの有効性が示されています。 例えば、121名の被験者を用いた臨床試験では、バレリアンを4週間投与した後に、不眠症改善効果を認めました。 日本で行われた臨床試験では、34名の睡眠障害患者を対象に、バレリアンを投与したところ、主観的な睡眠感の改善が認められました。 また、医薬品の長期連用による不眠症に対して、バレリアンが有効であるとする臨床試験も知られています。 さらに、知的障害と多動性を持ち、睡眠障害を訴える児童生徒(7~14歳の男児5名)を対象にした臨床試験で、バレリアンの効果が示されました。。 アロマテラピーの研究として、資生堂から報告されたデータでは、アトピー性皮膚炎患者11名を対象に、 鎮静系香料としてのバレリアンを曝露させることで、症状の改善が認められたということです。


■摂取方法

臨床試験では、400~900mgのサプリメントが使用されており、これはバレリアン乾燥末の1.5g~3.0gに相当します。 サプリメントによっては50~1000mg投与という場合もあります。 不眠症に対しては、就寝30分~1時間前に服用します。 短期間でも効果が認められますが、1ヵ月間程度続けることで睡眠の質が改善します。 また、不安感やストレス神経症などに対する鎮静作用を期待する場合には日中でも使用することがあります。


■注意事項

バレリアンの使用時に、頭痛などの訴えが報告されています。 しかし一般に、不眠症患者は不定愁訴が多く、バレリアンを用いた臨床試験でも、副作用の訴えは、バレリアン群とプラセボ(偽薬)群の両者に同様に認められています。 バレリアンに特有な副作用は知られていません。 なお、妊娠中や授乳中での使用は、臨床データが存在しないため、念のために使用を避けます。 通常量のバレリアンでは、依存性や半跳性不眠(摂取の中止で不眠になること)などは報告されていません。 一般に、催眠作用のある医薬品や、中枢神経抑制作用のある薬剤、アルコール類との併用は避けるべきです。


■バレリアンはこんな方にお勧め

ヨーロッパで古くから愛用されてきたバレリアンは、

  • 仕事や車の運転の後などで軽い興奮から寝付けない方
  • 日頃から眠りの浅い方
  • 旅行や仕事、特に交代勤務などで睡眠リズムを崩している方

などに、お勧めします。 バレリアンは、脳の覚醒システムを抑制する神経伝達物質のγ-アミノ酪酸(GABA)の受容体の働きを強めて、リラックス、眠りを誘います。