セントジョーンズワート

セントジョーンズワート(和名:セイヨウオトギリソウ)』は、 軽症から中等度の鬱病や鬱状態に対して医薬品と同等の効果があり、 副作用の発現頻度は医薬品よりも低いことが示されています。即効性はなく2~3週間継続すると効果が現れます。 セントジョーンズワートは、単独で利用する場合には、安全性は高いです。 ただし、肝臓での薬剤代謝酵素に影響を及ぼし、他の医薬品の血中濃度を変化させるため、医薬品と併用する際には注意が必要です。 日本や米国ではサプリメントですが、ドイツやオーストリアでは、処方箋の必要な医薬品として扱われています。


■「セントジョーンズワート」とは?

ストレス解消・気分改善によいリラックスバーブ

セントジョーンズワート 「セントジョーンズワート」(セイヨウオトギリソウ、聖ヨハネの草)は、欧州、アジア、北アフリカが原産地で、 北アメリカやオーストラリアでは外から持ち込まれたものが野生化しています。 レモンの香りがし、黄色い小さな花を多数つける、高さ30~60cmの多年草で、草原、丘陵地、森などに分布しています。 セントジョーンズワートは、花びらを指でこすると赤い液体が出てくる ことから、 洗礼者ヨハネが首を切られた時、その血波からセントジョーンズワートが芽生えてきたとの言い伝えがあります。 セントジョーンズワートの花の開花時期は6月下旬頃であるために、キリスト教文化圏では、使徒ヨハネ(John)の6月24日の誕生日にちなんで、 St.Johnの植物(plant=wort)つまり「聖ヨハネ草」と呼ばれるようになりました。 セントジョーンズワートはアングロサクソン民族の間ではSt.Joh's Wortの名で民間薬として広く使われている薬用植物で、 開花時に少なくとも2週間以上陽光にさらされた地上部の油性エキスは、癒し(ヒーリング)のハーブエキスとして中世から評判が高いものでした。



■期待される効能

軽症から中等度の鬱病、 季節性(冬季)鬱病、不安症、神経症の改善。


■作用メカニズム

鬱病では、何らかの原因により、脳内の神経伝達物質であるセロトニンやノルアドレナリンの量が減少しています。 セントジョーンズワートには、ヒペリシンやヒペルフォリン、フラボノイド系フィトケミカル、タンニン類などが含まれています。 単独の成分が抗鬱作用を持つのではなく、複数の有効成分のシナジーにより、セントジョーンズワートの効果が得られると考えられています。


■科学的根拠

これまでに行われたたくさんの臨床試験において、セントジョーンズワートが軽症から中等度の鬱病に対して、効果のあることが示されてきました。 1980年代、ドイツの研究者たちが、「セントジョーンズワートは、軽・中程度の鬱病患者に与えると、気分が高揚し、 自尊心が回復し、物事に対する興味を持つようになり、食欲がつき、睡眠パターンが正常化することがわかった」と報告しました。 その後、1996年には、鬱病治療に本格的に使われるようになり研究レベルが一気に加速し、 それまでに報告されたセントジョーンズワートに関する23編の研究を一まとめにして再検討した結果、延べ1757名の患者において、抗鬱効果が報告されました。 これらの臨床試験における平均的な投与期間は、4~8週間です。 8編の臨床試験では、セントジョーンズワートの効果が、医薬品(抗鬱薬)と比較されており、 セントジョーンズワートが医薬品と同等の効果を持つことが示されました。 このうち、プラセボ(偽薬)投与患者での症状改善が22%に対し、セントジョーンズワート投与患者での症状改善は55%に上り、 現在、セントジョーンズワートの有効率は55%、というのが定説になっています。 ドイツのコミッションE(薬用植物の評価委員会)は、鬱状態に対するセントジョーンズワートの使用を承認しており、 ドイツでは医師が鬱病患者に処方することが一般的になっています。 ただし、重症の鬱病患者を対象にした臨床試験では、セントジョーンズワートの効果は認められませんでした (同じ臨床試験において、比較のために用いられた医薬品のほうも、効果は認められませんでした)。 セントジョーンズワートは軽症から中等度の鬱病に効果があるサプリメントであるといえます。


■摂取方法

セントジョーンズワートは、即効性はないため、少なくとも2~3週間程度、継続して服用します。 標準化された製品は、ヒペリシンを0.3%程度、あるいはヒペルフォリンを2~5%程度含むように調整されています。 1日あたり500~900mg摂取しますが、1800mgまで増量可能です。


■注意事項

セントジョーンズワートによって、日光に敏感になり日光が当たった部分に発疹や発赤などの皮膚症状が出る日光過敏症を生じることがあります。 そのため、強い紫外線などを浴びないようにします。動物実験では、日光過敏症は、セントジョーンズワートの投与量に比例して生じます。 なお、日光過敏症というのは特殊な病態ではなく、一般的な医薬品などで生じる場合や、原因不明のケースが多く認められます。 また、日光過敏症ではなく、アレルギーのため発疹や皮膚のかゆみが現れることもあります。 以上のような場合、サプリメントの摂取量を減らして様子を見るか、あるいは中止します。

セントジョーンズワートを使用する際の注意点は、いくつかの医薬品との相互作用を持つことです。 これは、セントジョーンズワートの成分によって、肝臓の薬物代謝酵素が誘導され、同じ酵素によって代謝される他の医薬品の血中濃度に影響するために生じます。 また、セントジョーンズワートは、薬剤の吸収に関与するP糖タンパクにも影響を与えます。 その結果、経口避妊薬(ピル)や抗HIV薬(インジナビル)、ある種の免疫抑制剤(シクロスポリン)や抗不整脈薬、気管支拡張薬(テオフィリン)、 血液凝固防止薬(ワルファリン)などと併用すると、それらの効果を減少させることがあります。 また、一部の抗癌剤との相互作用も知られています。 したがって、何らかの医薬品を服用している場合、セントジョーンズワートを併用する前に必ず主治医に相談する必要があります。

その他、セントジョーンズワートと併用できない医薬品として、抗鬱薬の一種であるモノアミン酸化酵素(MAO)阻害薬(塩酸サフラジン)があります。 一般に、セントジョーンズワートは、抗鬱作用のある医薬品とは併用してはいけません。 例えば、医療現場でよく用いられる SSRIという種類の抗鬱薬と併用すると、 医薬品の作用が相加される(医薬品の副作用が発生しやすくなる)可能性があります。

このように、セントジョーンズワートは、他の医薬品と同等の効果があり、医薬品よりも副作用は少ないのも確かです。 セントジョーンズワートを上手に利用することで、効果を得るようにしたいものです。


■最新の研究

最新の研究で、セント・ジョーンズ・ワートが気分改善に効くのではなく、セント・ジョーンズ・ワートの有効成分である 「ハイパーフォリン」 が気分を改善しているということがわかりました。 ハイパーフォリンは、セント・ジョーンズ・ワートから抽出される成分で、 他のサプリメントでもよくこのセント・ジョーンズ・ワートは気分改善薬として使われています。 「ハイパーフォリン」が作用し、脳のセロトニン、ノルエピネフリン、ドーパミン、および GABA(ギャバ)の量を調整し自然な量にすることにより、 憂鬱な気分や不安を解消します。 このハイパーフォリンは、5-HTP(アミノ酸)や ビタミンB群と一緒に摂取することにより、 より効果を発揮することができます。 セント・ジョーンズ・ワートが含まれた商品でも、ハイパーフォリンを含まないものは気分改善に効果がありません。