【質問】バレット食道は癌に移行するの?

胃の不調でずっと内科に通っていましたが、昨年10月に「バレット食道」と診断されました。 処方はこれまでと同じネキシウム、モサプリドクエン酸塩、タフマックEです。 最近は食事の途中で吐き気や腹痛があります。パレット食道は「腺癌」に移行することがあるそうですが、 移行を防ぐ治療法、移行した場合の治療法などについて教えてください。


【答】

通常、食道の粘膜は扁平上皮で、胃や腸の粘膜は円柱上皮で覆われています。 「逆行性食道炎」などで胃と接している食道が胃酸に過剰にさらされて炎症が起こり、 食道の粘膜が扁平上皮から胃と同じ円柱形に置き換えられたものを「パレット粘膜」といい、 パレット粘膜が存在する食道を「パレット食道」といいます。内視鏡検査では多く認められ、珍しいものではありません。 パレット食道自体に症状はありませんが、胃酸の逆流と関連して発症するため、胸やけ、呑酸などの逆流症状や、胸痛、つかえ感などが起こることがあります。 パレット食道で問題になるのは、バレット粘膜の長さが3cm以上になると「食道腺癌」が発生するリスクが高くなることです。 腺癌は欧米の白人で非常に増加していることで問題になっていますが、わが国では大部分がバレット粘膜の長さが3cm未満で、腺癌の発生も今のところ多くありません。 バレット食道は胃酸などの逆流が主な原因であるため、症状がある場合や、症状がない場合でも予防的な対処法として、 胃酸分泌抑制薬であるプロトポンプ阻害薬(PPI)による治療が行われます。 そのほかに、ご質問者の服用されているような粘膜保護薬や消化管運動機能改善薬なども用いられます。 日常の生活では胃酸の逆流を悪化させる脂肪の多い食べ物や過食を避け、アルコールやタバコも控えるようにしましょう。 バレット食道自体を失くす治療として、欧米ではバレット粘膜を焼いたり、凍結したりして、本来の扁平上皮に戻す治療が行われていますが、 日本では健康保険の適応ではありません。また、バレット食道からの発癌を抑制する有効な方法も現時点ではありません。 バレット食道と診断された場合でも、定期的な内視鏡検査を受けることで癌の早期発見ができますし、内視鏡による治療も可能ですので、 過剰に心配される必要はないと思います。

(この答えは、2019年7月現在のものです。医療は日々進歩しているため、後日変わることもあるのでご了承ください。)