【質問】ピロリ菌の除菌後に胃炎が再発しました
数年前にピロリ菌を除菌する薬を飲みましたが、その後しばらくして胃炎が再発しました。
尿素呼気試験で「ピロリ菌ゼロ」と言われて安心していたのに、今の数値は「6」です。
胃の萎縮がひどい場合、ピロリ菌はなくならないのでしょうか。
再度、除菌する薬を飲んだ方がよいのでしょうか。
●60歳代・女性
【答】
ピロリ菌は、胃炎や胃潰瘍 だけでなく、胃癌の原因であることがわかっています。 一般的に、ピロリ菌の感染が分かれば、除菌治療を受けることが推奨されます。 除菌治療では3種類の薬(2種類の抗菌薬と1種類の胃酸分泌抑制薬)を1週間服用しますが、すべての患者さんで除菌が成功するわけではありません。 最近、新しい胃酸分泌抑制薬が使用できるようになり、除菌率が若干上昇しましたが、それでも約1割の患者さんで除菌が不成功となります。 わずかでもピロリ菌が残っていれば、徐々に菌が再増殖し、次第に感染診断が陽性に変化することがあるのです。 除菌治療不成功の原因は、ピロリ菌がもともと抗菌薬に強い耐性菌であるためと考えられます。 そのため、保険診療では抗菌薬の種類を変更して2回目の治療を行うことができます。萎縮がひどいことが除菌不成功の原因になることはありません。 まだ一度しか除菌治療を受けていないのなら、2回目の治療を受けることをお勧めします。 1回目の治療で失敗しても、2回目の治療では約9割の確率で除菌が成功するとされています。 気になるのは「尿素呼気試験」の結果が「6」であったということです。この試験の基準値は2.5パーミリ未満なので、6パーミリは陽性と判定されます。 ところが、胃の萎縮が極めて強い場合、ピロリ菌が陰性でも軽度の陽性値が出ることがあります。 特に強い委縮を伴う「自己免疫性胃炎(A型胃炎)」では、ピロリ菌が陰性でも軽度の陽性値を示すことが知られています。 ご質問者もこの病気の可能性があるかもしれませんので、一度専門医に相談されてはいかがでしょう。 その場合は、尿素呼気試験ではなく「便中抗原検査」でピロリ菌の感染診断を行うのがよいと思います。 ちなみに、除菌治療が成功すると胃癌になる確率は下がりますが、決して胃癌にならなくなるわけではありません。 除菌治療後も定期的な胃癌検診を受けることは、胃癌で大切な命を失わないためにとても重要なことです。
(この答えは、2019年6月現在のものです。医療は日々進歩しているため、後日変わることもあるのでご了承ください。)