【質問】B型肝炎ウィルスのキャリアといわれました
2年前に受けた健康診断で「B型肝炎ウィルスのキャリア」と言われました。
最近の検査では、HBe抗原(-)、HBe抗体(+)でした。現在、症状は特にありません。
今後の経過や治療の必要性、検査を受ける頻度などについて教えてください。
●59歳・男性
【答】
日本では、B型肝炎ウィルスのキャリアの人は、全人口の1.1%程度とされています。 1986年からは母子感染予防のため、母親がHBs抗原陽性の場合、出産時に子供に対して感染防止対策が行われています。 そのため、現在30歳以下の若い人には、キャリアが極めて少なくなっています。 キャリアの人のうち、約1割の人が慢性肝炎を発病し、肝硬変や肝癌 へ進行することがわかっています。残り約9割の人は、慢性肝炎を一生、発病せずに過ごすことができるとされています。 そのため、抗ウィルス薬(核酸アナログ)を内服する必要がある人は慢性肝炎を発病した場合に限られ、キャリアの場合は内服する必要はありません。 核酸アナログは副作用が少ない薬ですが、長期的に内服すると腎機能の低下や 骨粗鬆症などを合併する頻度が増加するため、定期的なチェックが必要になります。 したがって、慢性肝炎を発病していない場合は、核酸アナログを内服することは勧められません。 B型肝炎ウィルスキャリアであっても、HBV-DNA量(ウィルスの量)が多い場合は、慢性肝炎を発病するリスクがあります。 血液中のHBV-DNA量が3.3LogIU/mL以上の場合は、慢性肝炎を発病するリスクがあるため、3~6ヵ月ごとに血液検査と腹部超音波検査を受けることが勧められます。 一方、HBV-DNA量が3.3LogIU/mL未満の場合は、慢性肝炎を発病するリスクが低いため、1年に1回の血液検査でよいと思います。 肝機能の状態を表すASTやALTの値が上昇して慢性肝炎を発病した場合は、肝硬変や肝癌に進行しないように核酸アナログを内服する治療が必要です。 なお、B型肝炎キャリアの人では、ステロイドホルモンの薬や 関節リウマチの薬、 抗癌剤などの免疫を抑える作用がある薬で治療を受ける場合に、 B型肝炎ウィルスが再活性化して肝炎を起こすことがあります。 これらの治療を受ける場合は、必ず事前に「自分はB型肝炎ウィルスキャリアである」ことを担当医に告げておくことが必要です。
(この答えは、2020年1月現在のものです。医療は日々進歩しているため、後日変わることもあるのでご了承ください。)