【質問】膵嚢胞が癌に変化しないか心配です

「膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)」と診断されました。2cm、1cm、3cmくらいの膵嚢胞があり、 1年に1回、大学病院で超音波内視鏡検査や腫瘍マーカー検査を受け、普段は市立病院で半年に1回ほど血液検査をして経過を見ています。 IPMNは悪性へ変化することもあるそうですが、 膵臓癌は経過が速いので心配です。


【答】

「膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)」とは、1980年代初めに日本の臨床医が発見した膵臓の嚢胞性腫瘍です。 嚢胞とは小さな袋のようなものを指します。膵臓は食べ物を消化する膵酵素を作り、膵管を通して膵酵素を含んだ膵液を十二指腸に分泌します。 膵管の内側は一層の細胞が敷き詰められてできていますが、この細胞が腫瘍化して粘液をたくさん分泌するようになると、 本来細い管である膵管が膨らんで小さな風船のようになります。これがIPMNです。 超音波検査やCT、MRIなどの画像診断法が発達し、しばしば見つかるようになりました。 その多くは良性で、長い間、嚢胞の大きさや形は変化しません。 しかし、一部のIPMNでは嚢胞の細胞が癌化(悪性化)したり、嚢胞とは全く別の場所に膵臓癌ができたりすることがわかってきました。 IPMNの患者さん100人を診ていると、年に約1人が癌化するという報告もあります。 悪性化していないか注意が必要なのは、主膵管の太さが5mm以上(通常は2mm以下)、嚢胞の大きさが3cmを超える、 嚢胞や主膵管の中に”こぶ”のような細胞の塊が見える、嚢胞の壁が厚くなる、嚢胞が急に大きくなる、主膵管が急に太くなるなどの場合です。 一方、嚢胞とは別の部分に膵臓癌ができる可能性もあり、この場合は嚢胞の大きさは関係ないといわれています。 そのため、小さいIPMNだからといって放置はできません。 悪性化の前触れとして、血糖値が上がる、糖尿病を発症する、 血中酵素(アミラーゼやリパーゼなど)や腫瘍マーカー(CA19-9)が上昇するなどの変化が見られる場合もあるので、 画像検査だけでなく血液検査も併せて行う必要があります。 検査の種類や検査を受ける頻度は、嚢胞の大きさや主膵管の太さなどによって異なるので、専門施設で診ていただくのがよいでしょう。 専門施設での慎重な経過観察が悪性化の早期発見に繋がる最も大事なポイントです。 また、IPMNと診断された場合は、膵臓癌の危険因子(喫煙、大量の飲酒、肥満、糖尿病など)を一つでも減らすよう心がけることも大切です。 ご質問者は、大学病院と市立病院で定期的に経過観察されていますから、これを続けることが肝要です。 また、専門施設での慎重な経過観察を信頼して、過剰な不安を持たないことも大切と考えます。

(この答えは、2018年5月現在のものです。医療は日々進歩しているため、後日変わることもあるのでご了承ください。)