【質問】胃癌検診で赤く膨らんだ部分が見つかりました

昨年の夏、癌検診で胃内視鏡検査を受けたところ、赤く膨らんだ部分があり、医師から「危険な状態」と指摘されました。 昨年までこのような異常はありませんでした。今後、膨隆した部分が癌化する可能性は高いのでしょうか? ピロリ菌の除菌治療は4年前に受けました。
●71歳・男性


【答】

医師の「危険な状態」という説明に不明瞭、不十分な点があったようで、ご心配かと思います。 まず、今回の胃内視鏡検査で見えた「赤く膨らんだ部分」が何であるのかを正確に診断する必要があります。 これまではそうした異常は指摘されず、今回初めて指摘されたとのことですので、「胃静脈瘤」や、「血管腫」などの血管の異常が最も考えられます。 この場合は、異常部位から出血する可能性がありますので、そうした意味から医師は「危険な状態」と説明されたのかもしれません。 ただ、血管の異常部位から 「胃癌」が生じることはありません。 胃癌が疑われる場合は、生検(胃癌診断のための病理検査)が行われますが、 血管の異常がある場合は、生検後に出血するため、生検は禁忌とされています。 次に考えられるのは”熟れ過ぎたいちご様”に見える「胃過形成ポリープ」です。この場合、頻度は低いのですが、癌が生じる場合があります。 ただし、胃過形成ポリープの大半は、ピロリ菌除菌によって消失します。 もし、見つかった病変が胃過形成ポリープであった場合は、ピロリ菌が除菌されていない可能性もあるので、 ピロリ菌除菌を判定するための再検査が必要かもしれません。 また、可能性は低いと思われますが、胃癌も考える必要があります。 ご質問者の年齢でのピロリ菌の除菌治療では、除菌後にも胃癌の発症リスクが残ります(非除菌者に比較してリスクは70%低下するが30%は残る)。 ただ、胃癌であったとしても、おそらく「早期胃癌」と思われますので、内視鏡治療が可能です。 また、早期胃癌の場合は、ほぼ100%治癒しますので、ご安心ください。
いずれにせよ、これらの診断や区別は専門医であれば内視鏡所見から容易に判断できるものです。 もう一度、胃腸専門医による内視鏡検査を受け、異常を指摘された部分の正確な診断の説明をお聞きになることをお勧めします。

(この答えは、2020年3月現在のものです。医療は日々進歩しているため、後日変わることもあるのでご了承ください。)