脳卒中の再発予防の薬物療法

脳卒中の中でも「脳梗塞」は再発する可能性が高いとされています。 脳梗塞は「血栓」が脳の血管に詰まって起こるため、再発予防では血栓ができるのを防ぐことが重要になります。 ここでは再発予防のための薬物療法について紹介します。


■脳梗塞の再発予防

「抗血小板療法」や「抗凝固療法」を行なう

脳梗塞で入院した患者を対象に、再発率を累積して調べたデータによると、最初の脳梗塞から1年までに再発した人は14.1%、 3年までには20%、4年までには26.1%でした。最初の1年は、それ以降に比べて再発が多いことがわかります。 脳梗塞の多くは、「高血圧」や「糖尿病」など、何らかの下地となる病気(基礎疾患)があって起こります。 そのため、再発予防の基本は「薬物療法」基礎疾患の治療です。 薬物療法では「抗血栓療法」を行ないます。抗血栓療法では「抗血小板療法」「抗凝固療法」があり、 脳梗塞の原因となったと考えられる血栓の種類によって使い分けられています。

◆血栓の種類

血栓には「血小板」などが集まってできる「白色血栓」と、血流の遅いところで「フィブリン」という線維に 「赤血球」などが結合してできる「赤色血栓」があります。 「アテローム血栓性脳梗塞」では「動脈硬化」の初期には白色血栓ができますが、 進行すると血流が遅いところができ、次第に赤色血栓がつくられるようになることもあります。


●抗血栓療法

抗血栓療法では、血小板が集まったり、フィブリンができるのを防ぎます。
「抗血小板療法」と「抗凝固療法」があります。

◆抗血小板療法

血小板が集まるのを抑える治療で、主に、白色血栓の割合が多い「ラクナ脳梗塞」「アテローム血栓性脳梗塞」に行なわれます。 「抗血小板薬」には、いくつかの種類があります。「アスピリン」は標準的な薬として広く使われています。 アスピリンの効果が不十分な場合は、日本では長い間「チクロビジン」を使用していましたが、 まれに重い副作用が起こるため、最近では副作用が少ない「クロピドグレル」が広まっています。 また、日本で開発された「シロスタゾール」は出血性の合併症が比較的起こりにくいとされています。

◆抗凝固療法

主に、赤色血栓の割合が多い「心原性脳塞栓」に行なわれます。この治療で使用されている薬は「ワルファリン」で、 フィブリンができるのを防ぎます。心原性脳塞栓の予防に高い効果を発揮しています。 しかし、効果の現れ方には大きな個人差があり、適正な使用量の調節が難しいのが難点です。 薬の効果は血液検査でわかるので、月に1回は検査を受けてください。 現在、使用量の調節が不要な「抗トロンビン薬」の研究、開発が進んでいます。

◆抗血栓療法の注意点

抗血栓療法を受けている間は、「脳出血」「消化管出血」などの出血性の合併症が起こりやすくなります。 また、血圧が高いと血管壁にかかる圧力が高いため、脳出血などを招く危険性が高くなります。 これらを防ぐには、血圧の管理を行なうことが大切です。 「胃潰瘍がある」「血小板が少ない」など出血しやすい状態の人は、抗血栓療法を受けることができません。 また、服薬中に「手術」や「内視鏡検査」などで出血が予測される場合は、一時的に薬の使用を中断します。 また、ワルファリンは「ビタミンK」を含む食品を摂取すると効果が弱まるため、注意が必要です。 薬の飲み合わせも効果に影響することが多いため、担当医の指示通りに飲むことが大切です。


●使用する薬
治療法 薬の名称 効果
抗血小板療法 アスピリン 薬価が安く、世界で最も多く使われている。胃腸障害を起こすことがあるため、 胃潰瘍などがある人は使用できない。
チクロビン アスピリンより多少効果が高いが、まれに肝機能障害や血液障害などの重篤な副作用が現れることがある。
クロピドグレル チクロビンと同等の効果があり、チクロビンよりも副作用が少ないとされているが、薬価が比較的高い。
シロスタゾール 出血性の合併症は比較的少ないとされている。血管拡張作用により、頭痛や動悸が起こりやすい。 薬価は比較的高い。
抗凝固療法 ワルファリン 血栓予防の効果は高いが、適正な使用量が患者によって異なる。 使用量は、定期的に採血して効果を確認しながら調節する。