■高齢で狭心症があるのですが、どのような降圧薬が適していますか?

【答】

2009年に日本高血圧学会が改訂した『高血圧治療ガイドライン』では、高血圧の薬物療法で用いる代表的な降圧薬として、次の5種類が挙げられています。

▼カルシウム拮抗薬
カルシウムイオンが血管の筋肉細胞に入り込んで血管を収縮するのを妨げ、血管を広げる。

▼ARB
血管を収縮させるアンジオテンシンⅡというホルモンの働きを抑えて血管を広げる

▼ACE阻害薬
アンジオテンシンⅠというホルモンをアンジオテンシンⅡに変換する「ACE」という酵素の働きを抑えて血管を広げる。

▼α遮断薬・β遮断薬
血管の筋肉にあるα受容体や、心臓の筋肉にあるβ受容体に作用して、血管の収縮を抑えたり脈拍数を減らしたりする。

▼利尿薬
体内の過剰な水分やナトリウムの排出を促して、血液を減らす。

このうち、狭心症や心筋梗塞などの合併症を抱えている高齢者の治療に適しているのが、もともと狭心症の治療薬として開発された「カルシウム拮抗薬」です。 カルシウム拮抗薬は、現在、日本で最も多く使われている降圧薬です。 血液中のカルシウムイオンには、血管壁を構成する筋肉に働きかけて血管を収縮させ、血圧を上げる作用があります。 カルシウム拮抗薬はカルシウムイオンのそうした作用を妨げて、末梢の血管の収縮を抑え、血圧を下げるのです。 特に、動脈硬化が進んで血管が硬くなった高齢の人には、このカルシウム拮抗薬がよく効きます。 カルシウム拮抗薬には、ジヒドロピジン系・ベンゾチアゼピン系・フエニルアルキルアミンの3タイプがあります。

▼ジヒドロピリジン系
血管を広げる作用が強く、降圧効果に優れいます。副作用として、ほてり・頭痛・動悸・除脈などが起こったり、 脚のむくみや歯茎の腫れなどが現れまりしまたす。

▼ベンゾチアゼビン系
心臓に作用する薬でで、心拍数を抑える効果を期待する場合に有効です。 ジヒドロピリジン系に比べると降圧効果は緩やかに現れます。

▼フェニルアルギルアミン系
ベンゾチアゼビン系と同様に心臓に強く作用します。日本では、主に抗不整脈薬として処方されます。

ベンゾチアゼビン系とβ遮断薬を併せて使用すると、心臓の働きが抑えられすぎて心不全を起こす危険があるので使用を避けます。 また、いくつかのカルシウム拮抗薬を服用している間は、グレープフルーツやザボン、ダイダイを食べたり、 それらの果物に含まれるナリンジンという苦み成分には、カルシウム拮抗薬の代謝にかかわる体内の酵素の働きを阻害し、 薬の作用を過度に強める作用があります。