■日本人には降圧薬として利尿薬が適していると聞きましたが、詳しく教えてください。

【答】

高血圧と一言で言っても、実はそのタイプは大きく分けて二つあります。 それは「ギュウギュウ型」と「パンパン型」です。 ギュウギュウ型とは、体内で作られるアンジオテンシンⅡという物質によって血管がギュウギュウと収縮して狭くなることで 血管壁が受ける圧力が高くなるタイプの高血圧です。 一方のパンパン型とは、塩分を過剰に摂って血液中の塩分濃度が高くなった結果、血液を薄めるために血管内に大量の水が引き込まれて 血管がパンパンに膨らむことで血管壁が受ける圧力が高くなるタイプの高血圧です。 パンパン型では、過剰な水分や塩分を体外に排出しようと腎臓ががんばりすぎるために腎臓が衰えやすくなり、 そのことで過剰な水分や塩分が排出されにくくなって血圧が上がるという悪循環が起こります。

二つのタイプのどちらの高血圧になりやすいかは実は人種の違いで分かれており、日本人では7:3の割合で パンパン型の方が多いことが わかってきました。日本人は古来、塩分を多量に摂取する食生活を送ってきたため、 パンパン型の高血圧に陥りやすいのです。 特に高齢の人ではパンパン型が多くなります。これは、年を重ねるとともに腎臓の働きが衰えていき、 過剰な水分や塩分を排出する能力が低下していくためです。若いころはギュウギュウ型だったのに、60代半ばを過ぎてから パンパン型に移行していくというケースもよく見られます。 ちなみにギュウギュウ型の高血圧は、アンジオテンシンⅡが活発に生産される体質の人が多い傾向にある欧米人によく見られます。

日本人に多いパンパン型の高血圧には、利尿作用があるカルシウム拮抗薬がよく効きます。 利尿薬とは、その名のとおり尿の生成を促して、血液中の水分や塩分を排出させる効果がある薬です。 パンパン型の高血圧の人が利尿薬を服用すれば、血管をパンパンに膨らませる原因となる血液中の過剰な水分や塩分が減るため、 血管壁が受ける圧力も低くなるというわけです。

皆さんの中には、主治医から処方された降圧薬を毎日きちんと服用しているにもかかわらず、 高い血圧が下がらないと悩んでいる人は少なくないと思います。 その背景には、実はパンパン型の高血圧にもかかわらず、ギュウギュウ型の高血圧を正すARBやACE阻害薬を 処方されているケースが多々見られるのです。 薬物療法で血圧が下がらない人は、一度、主治医に利尿薬の服用について、相談してみることをお勧めします。

▼関連サイト
『高血圧の薬物療法』