■降圧薬を飲むとぼけやすくなると聞きましたが、本当ですか?

【答】

これは、おそらく「降圧薬で血圧が下がると、心臓より高い位置にある脳に血液が送られにくくなる」と考えるためではないでしょうか? あるいは、身近に降圧薬を服用する人がいて、その人が不幸にも認知症に陥るのを目の当たりにしたのかもしれません。 しかし、実際は質問にあるのとは逆で、欧米や日本で行われたいくつかの研究では、降圧薬には脳血管性認知症の発症や進行を 抑える働きがあると指摘されています。また、降圧薬の中には、アルツハイマー型認知症を予防する効果が備わっていることが 知られているものもあります。

そもそも高血圧の人では動脈硬化に陥って脳の血管が詰まりやすくなり、 認知症の発症の危険が高まると指摘されています。 だから、高い血圧を下げる降圧薬を飲むことで、認知症の危険がさらに高まるということは一般的には考えづらいのです。 降圧薬は脳の血流を保つように作用するので、認知症の発症というよりも予防する方向に働くと考えられます。 降圧薬を服用している高齢者の中に、一定の割合で老人性の認知症が出てくることは確かです。 しかし、70歳を超える人の60%以上が高血圧を患っていると言われ、そのほとんどの人が降圧薬を服用しているという現状から鑑みれば、 その中から加齢に伴う認知症が出てくるのは当然のことといえます。 降圧薬の服用によってボケやすくなるという指摘がそぐわないことはこうした状況からわかってもらえるでしょう。