糖質制限食①

カロリー制限は必要なし!
糖質制限こそが糖尿病と合併症の予防と改善に効果大!


■そばを食べると血糖値が上がる

糖尿病の患者さんの中には、いまだに毎日厳しいカロリー制限をしながら、 血糖値をコントロールされている人が多いのではないでしょうか。 今から30年以上前、私が医師になったころから、糖尿病の食事療法は厳しいカロリー制限でした。 しかし、アメリカでは、既に10年ほど前に、カロリー制限の食事療法から、糖質(炭水化物)の摂取量を減らす食事療法へ 私は患者さんに食事の前後に自分で血糖値を測ってもらっていますが、切り替わりました。 血糖値の上昇にカロリーは全く関係ありません。 例えば、どんなに分厚いステーキを食べても、血糖値はほとんど上がりません。 ところが、ヘルシーだと思われているそばを食べると、たちまち血糖値が上がるのです。 これには、最初、ほとんどの患者さんがビックリされます。 つまり、糖尿病の患者さんの血糖値のコントロールには、カロリー制限はほとんど意味がなく、制限すべきは糖質なのです。 正確には、「糖質=炭水化物」ではなく、糖質を含む食品のほとんどは食物繊維を含むため、 「糖質=炭水化物-食物繊維」となります。 食物繊維は人間の消化酵素では分解されず、食べても体内に吸収されないので、血糖を上げる物質から除いて考えます。

なかには、糖質制限は、甘いものを制限すればいいと勘違いしている人もいるようです。 糖質には、清涼飲料水や菓子類などに含まれるショ糖(砂糖)やブドウ糖、果物に含まれる果糖などの「単純糖質」があります。 その他に、ブドウ糖が無数に連なった「複合糖質」という”甘くない糖質”があるのです。 その代表格は、主に穀物に含まれているデンプンです。デンプンは、ご飯、パン、麺類などの穀類のほか、 イモ類にも多く含まれています。糖質は体内に入ると分解されて、すべてブドウ糖になります。 ブドウ糖が血液中に多すぎる状態が高血糖で、それが長く続くと糖尿病になるのです。 このように血糖を上げるのは、糖質だけです。魚や肉に含まれるタンパク質や脂肪が、血糖値を上げることはまずありません。 まず、糖尿病の治療では、血糖値を下げてコントロールすることが大切です。 その指標は、過去1~2ヶ月の血糖状態がわかるヘモグロビンA1c。医師は、この数値のみを注意しているケースがほとんどです。 ところが、糖尿病の合併症でである腎症を予防・改善して、将来、人工透析を受けないようにするためには、 「尿アルブミン」の管理もとても大切なのです。


■糖質オフのスイーツも楽しめる

アルブミンとは血液中に最も多いタンパク質で、腎臓が正常なら、尿に漏れ出すことはありません。 つまり、アルブミンが尿に漏れ出る量で、腎臓の病状がわかるのです。 腎臓は血液を濾過するフィルターの役目をしていて、血液中の水分や、それに溶け出た老廃物は、 このフィルターの穴から尿に排出されます。通常、この穴は、アルブミンより小さいので、 アルブミンが尿中に漏れ出ることはありません。 ところが、糖尿病が進むと、高血糖によって腎臓がダメージを受けて穴が大きくなり、アルブミンが尿中に漏れ出し、 尿アルブミン値が高くなるのです。腎臓のフィルターの穴が大きくなるまでには、糖尿病になってから5~10年かかります。 ただし、穴が一度大きく開いてしまうと、いくら血糖値を下げても塞がりません。 その場合、薬を服用して腎臓の治療をしない限り、穴は広がり続けます。

ある患者さんはヘモグロビンA1cは5.2%でしたが、尿アルブミンは6400mg/g・Cre(正常値は18mg/g・Cre以下)もありました。 その患者さんの腎臓は、例えるなら、ザルのごとしで、そこまで高いと透析を避けられませんでした。 いくらヘモグロビンA1cが正常値でも、合併症は確実に進んでいるのです。 まずは、ヘモグロビンA1cを定期的に測ることが大切です。さらに、糖尿病の腎症の管理には、尿アルブミンの数値を、 主治医と相談して定期的に測る必要があります。 糖尿病の合併症の予防・改善にも、糖質制限は大変有効です。 ポイントは、まず、糖質が多く含まれる主食(ご飯・パン・麺類)を抜くことです。 次に、おかずも糖質の少ないものを選びます。タンパク質の多い魚介類や肉類、葉物を中心とした野菜、 キノコ類、海藻類、チーズ、大豆製品、卵、ナッツなど、美味しく食べられるものはたくさんあるのです。 自然派甘味料や糖質の少ない材料に置き換えて作れば、糖質オフのスイーツを楽しめます。 すりおろした高野豆腐や、市販のドライおからを使えば、糖質オフの揚げ物も食べられます。 お酒は糖質オフのビールやワインなら安心でしょう。ただし、食べ過ぎ、飲み過ぎには注意しましょう。 糖尿病の予防・改善のために糖質制限を行う場合は、1日に摂取する糖質の量を100g以内に抑えましょう。 なお、ダイエットが目的で行う場合は、1日50g以内にしてください。