睡眠負債

睡眠不足が積み重なった睡眠負債の状態は、 「認知症」や生活習慣病などの危険性を高めます。 睡眠負債の解消には、睡眠時間を増やすことと、「朝型」の生活に変えていくことが大切です。

■睡眠負債とは?

睡眠不足が積み重なっている状態

『睡眠負債』とは、睡眠不足が積み重なっている状態のことです。 睡眠負債は、そのままにしていると、命に関わる病気の危険性を高めたり、生活の質を低下させたりすることに繋がります。 日本人の睡眠時間は、過去20年間にわたって減り続けており、特に40歳代や50歳代の働き盛りの世代に、この睡眠負債を抱えている人が相当数いるとみられています。 これには、平日は睡眠時間がより短くなり、それを休日に”寝だめ”をすることで補おうとしている実情があると考えられています。 適切な1日の睡眠時間は、体質や生活状況などにより個人差があり、何時間寝るという明確な基準はありません。 しかし、さまざまな研究から、大人の場合、1日6〜8時間が目安とされています。 働き盛りの世代では、少なくとも6時間は確保したいところです。 一方、リタイア世代では必要睡眠時間が若いころよりも短くなるので、日中の不調がなければ、過度に恐れる必要はありません。


■睡眠の役割

「心身の休養」と「心身の調整」が行われる

私たちの体では、睡眠中も細胞や組織、臓器が働いて、次のようなことが行われています。
一つは「心身の休養」です。日中は交感神経の働きが活発になり、心身の緊張が高まりますが、眠ることで交感神経は静まり、体がリラックスします。 また、睡眠中には老廃物を排出したり、損傷した組織を修復するなどの作業も行われ、日中に蓄積した疲労を回復させます。 もう一つは「心身の調整」です。睡眠中に不要な記憶を消去し、必要な記憶を長期間保てるようにする作業が行われています。 それ以外にも、気分を安定させる、血糖をコントロールする、免疫を働きを高めるなど、翌日の活動に向けての準備を整えます。


●体内時計の仕組み

睡眠と覚醒などのリズムをコントロールしているのが脳の「視交叉上核」というところにある 「体内時計」です。 体内時計があることで、朝に脳の温度が上がったり、覚醒を促すホルモンが分泌され、覚醒度が徐々に高まるようになっています。 そして、夜には「メラトニン」というホルモンが分泌されたり、 副交感神経が優位になって、覚醒度が低下して眠気が出てきます。 このように、体内時計によって一定の感覚で睡眠と覚醒が繰り返されているのです。


■睡眠負債が及ぼす影響

認知症や鬱病、生活習慣病などの危険性が高まる

睡眠不足になると、日中に眠気や倦怠感が出るだけでなく、さらには仕事の能率が低下したり、事故に繋がる可能性が出てきます。 また、睡眠不足が長期化すると、さまざまな病気の危険性が高まります。 近年、睡眠時間が短いと「認知症」を発症しやすくなることがわかってきました。 前述のように、睡眠には「老廃物を排出する」働きがあります。 睡眠不足になると、「アルツハイマー病」 の原因といわれる老廃物(アミロイドβ)を脳の外に排出する働きが弱まります。 その結果、認知症を発症しやすくなると考えられます。
ほかにも、睡眠不足は、「鬱病」を引き起こすことがあります。 また、血糖値が上がりやすくなって「糖尿病」に繋がったり、 「高血圧」「肥満」などのリスクも高めます。 これらの生活習慣病があると、「心筋梗塞」「脳卒中」などの命に関わる病気を引き起こしやすくなります。


●休日の”寝だめ”は逆効果

睡眠不足を補おうとして、休日に”寝だめ”をしている人も多いでしょう。 疲れが一時的に取れたように感じることがあるかもしれません。 しかし、”寝だめ”では睡眠負債を解消することはできず、かえってよくない状態を招きます。 一般に、平日は、睡眠時間が短い人でも、睡眠と覚醒のリズムは一定に保たれています。 しかし、休日に”寝だめ”をすると、平日よりも遅くまで寝てしまうことになり、平日に何とか保っていた、 睡眠と覚醒のリズムと体内時計のバランスが乱れてしまいます。 そして休日明けには、再び早く起きなければならないため、体にはさらに大きな負担がかかってしまうのです。 休日の”寝だめ”は、毎週末、体に”時差ぼけ”のような状態を起こしているのです。


■睡眠負債を解消する方法

睡眠時間を増やすとともに、「朝型」傾向の生活に変える

睡眠負債を解消するためには、まず睡眠と覚醒のリズムを見直して、睡眠時間を増やすことが必要です。 また、自分の生活リズムが「夜型」傾向になっていないかどうかをチェックして、できるだけ「朝型」傾向に変えていくことも重要です。

●「夜型」から「朝型」の生活に変える

午前中の日光には、体内時計を調整し、勧める作用があります。夜型の人は、午前中に日光をたっぷり浴びるようにしましょう。 日光を浴びることによる効果は、起床した直後が最も大きく、日光が強いほど、また長く浴びるほど高まります。 ただし、太陽を直接見ると、目を傷めます。できるだけ明るい方向を眺めるだけにしましょう。 反対に、午後遅めから深夜にかけて強い光を浴びると、体内時計が後ろにずれていきます。 暖色系の照明を使用することなどを心がけてください。 また、強い光は脳を刺激して、短時間で覚醒度を高めるので、夜はスマートフォンなどを使う時間を短くしましょう。

夜型の人が朝型の生活に変えるには、夜早く寝ようとする努力より、少し無理をしてでも、朝早く起きる方がうまくいくといわれています。 朝型の生活に変えるために、まずは早起きをしてみましょう。夜に眠気が来る時間も早まります。 2〜3週間ほど続けていると、早寝早起きのリズムができるようになってきます。 また、休日の”寝だめ”を避けて、平日の睡眠時間を増やすことが大切です。 なお、睡眠を、都合のよい時間帯に分割してとるのは避けましょう。 心身の調整には、一度にまとまった時間で睡眠をとる必要があります。

また、長時間の昼寝は、夜の眠気を妨げるので注意が必要です。 ただし、朝型に変え始めたばかりのころは、どうしても睡眠不足になるので、少し長めの昼寝をとることで補ってもよいでしょう。 朝型の生活に慣れ始めてからは、日中どうしても眠くて辛い場合、できるだけ午後の早い時間帯に20〜30分程度の昼寝をするようにします。 この程度なら夜の睡眠に影響はなく、頭もすっきりして仕事の能率も上がります。