肉(獣肉)の多食と野菜不足の食生活
食生活の欧米化で癌が急増
「癌体質を招く血液衰弱」を引き起こす原因はいくつかありますが、 その中で最も大きいのは、「肉(獣肉)の多食と野菜不足の食生活」でしょう。 実は、癌の発生原因の半分以上は、食生活の乱れに起因すると考えられています。 私たち日本人の食生活は、戦後、肉を代表として、卵や牛乳、バターなどの動物性のたんぱく質と脂肪が多い食品を たくさん摂る欧米型に移行しました。それと呼応するかのように、肺癌や大腸癌、膵臓癌、乳癌、卵巣癌、子宮癌、 前立腺癌、食道癌、腎臓癌などの欧米型癌が急増し、癌の患者数が大幅に増えたのです。 そのため、癌は1981年以降ずっと日本人の死亡の第一位になっているばかりか、2006年に約33万人だった 癌による死亡者数は、近い将来には50万人に迫ると推測されています。
●肉や脂肪が発癌の危険性を高める理由
動物性たんぱく質が発癌物質に変わる
肉の多食に代表される動物性のたんぱく質と脂肪の摂り過ぎが血液衰弱を招き、癌の危険性を高める理由は 以下のようなものです。
「動物性たんぱく質」は、体内に取り込まれて分解されると、最終的に尿酸や尿素窒素、 クレアチニンなどの老廃物となります。つまり、肉の多食は、血液中の老廃物を著しく増やす原因になるのです。 血液中の老廃物が過剰な状態が続くと、全身の細胞に悪影響を及ぼして働きを衰えさせ、細胞が癌化しやすくなります。 また、動物性たんぱく質は多種類のアミノ酸が組み合わさってできています。 特に、動物性のたんぱく質を構成するリジンやアルギニンは、体内に取り込まれると、腸内細菌がそれらを材料にして、 アミンという塩基性化合物を作り出します。実は、このアミンは飲料水や人の唾液に含まれている硝酸塩と反応して、 強力な発癌物質であるニトロアミンに変化することが知られているのです。 同じく肉に含まれるトリプトファンも、腸内細菌の働きで、アミンやインドロール、スカトール、アンモニアなどの 発癌物質に変化します。
一方、「動物性脂肪」は、摂り過ぎると血液中にだぶついていわゆるドロドロ血液を招きます。 ドロドロ血液だと、血流が悪化するばかりか、全身の細胞への酸素や栄養の供給が滞ったり、 白血球の働きも弱まって免疫力の衰えを招いたりすることになります。 また、動物性脂肪を摂るとそれを消化するため、肝臓から十二指腸に胆汁が大量に分泌されます。 この胆汁に含まれる胆汁酸は、腸内細菌の働きによって、大腸癌の原因となるデヒドロコール酸という 発癌物質に変化します。 また、動物性脂肪を大量に摂取すると、女性ホルモンや男性ホルモンが過剰に作られ、乳癌や卵巣癌、前立腺癌など ホルモンと密接に関わる器官の癌が多発することが知られています。
●癌を予防するには?
肉を控えて野菜を多く摂る食生活に変えよう
癌体質を招く血液衰弱には、肉を多食する人に起こりがちな植物性食品の不足も大きく関係しています。 野菜や果物、海藻、キノコには、血液の浄化や癌の抑制に役立つビタミンやミネラル、抗酸化成分 などの栄養素が非常に豊富に含まれています。ビタミンやミネラルは、体内で行われる何万、何十万という化学反応に欠かせない 栄養素として知られています。それらが欠乏すると、化学反応が滞り、血液中に毒素や老廃物が多く産出されてしまうのです。 野菜や果物などに含まれる抗酸化成分であるポリフェノールなどの不足も、癌を招く原因となります。 みなさんもご存知のとおり、癌は活性酸素によって細胞の遺伝子が傷つけられることでも発生します。 そのため抗酸化成分が不足すれば、癌も発生しやすくなります。
- 【関連項目】
- 『野菜系サプリメント』
- 『海藻類』
- 『食物繊維』
- 『ビタミン類』
- 『ミネラル』
- 『抗酸化力強化サプリメント』
- 『ポリフェノール類』
◆ビタミン・ミネラル不足が招く癌
- ▼ビタミンA
- 肺癌・ 食道癌・ 腎臓癌・ 膀胱癌など
- ▼ビタミンB1
- 膀胱癌
- ▼ビタミンB2
- 肝臓癌
- ▼ビタミンB6
- 膀胱癌をはじめ、さまざまな癌
- ▼ビタミンC
- 胃癌をはじめ、さまざまな癌
- ▼ビタミンE
- さまざまな癌
- ▼亜鉛
- 膵臓癌
- ▼鉄
- 胃癌
- ▼ヨード
- 甲状腺癌
●癌による死亡率を減少させた米国の例
米国は官民一体で健康政策を推進
前述のように、癌を防ぐためには、食事で摂る肉の量を極力減らし、野菜や果物などの植物性食品をできるだけ 多くとることが非常に重要です。ここでは、実際に国策として国民の食生活の見直しを図り、 野菜と果物の多食を促すことで癌による死亡率を減少させた米国の例を紹介しましょう。
米国政府は、国民の食生活を改善し、癌などの生活習慣病を撲滅するため、たびたび国を挙げた健康政策を 発表してきました。1979年には、「ヘルシー・ピープル」という政策を発表しています。 この政策の優れている点は、癌を初めとする生活習慣病による死亡率を下げるために、国民が何をするべきかという、 生活上の目標が具体的に示されたことです。1991年には癌予防の一環として「5 A DAY」という運動が始まりました。 この運動の趣旨は、「1日5皿(品目)以上の野菜と果物を摂ろう」という、誰にでもわかりやすいシンプルな提案でした。 特に米国民の食生活に大きな影響を与えたのは、1990年代に米国癌研究所が中心になって推進された 「デザイナーズフーズ計画」です。この計画では、癌予防に効果のある植物性食品のリストが示され、 その積極的な摂取が進められました。そして、1997年には、米国衛生研究所のリチャード・ドール卿らが 「癌予防の14箇条」を提言。植物性食品を中心にした食事の、具体的なモデルが示されたのです。
これらの長期間にわたる政策により、米国内でそれまで増加の一途をたどっていた癌の死亡率が、 なんと1990年代初めを境に、年に約1.1%のペースで減少し続けたのです。 世界的に癌の死亡率が上昇する中、こうした成果が得られたのは、非常に意義深いことでしょう。
◆日本でも食生活の改革が始まっている
こうした米国の状況を踏まえて、日本でも2000年から「食生活指針」や「健康日本21」などの 官民一体となって行う食生活改善運動が始まっています。 特に、「健康日本21」では、野菜の摂取量の増加を目標の一つに掲げて、成人1人あたりの1日の野菜摂取量を 350gに増やすように提言していますが、なかなかその目標に達していないのが現状のようです。
●最後に
これらのことから、肉の多食と野菜不足の食生活が癌を招く血液衰弱を引き起こしたり、直接癌の発生に関わったり することがおわかりいただけたでしょう。ハンバーグや焼肉、とんかつ、から揚げなどの肉料理が好きで 毎日のように食べている人は、肉の多食の害が大いに心配といえます。 癌にならないためにも、日々の食事では肉の摂取量を1日60g程度と控えめにし、野菜はたっぷりと1日に350g以上、 果物も200g以上摂りましょう。海藻やキノコも積極的にとってください。