肥満がある人の高血圧の対処法

肥満がある高血圧の人は、まず生活習慣の改善に取り組みます。 それが効果的であることは、肥満がある高血圧の人を対象にした調査でも明らかです。 調査では、減量することで収縮期血圧が平均12.5mmHg低下することがわかりました。 運動では収縮期血圧が平均6.5mmHg下がっています。



■肥満がある人の高血圧の対処法

減量が最も効果的で、10mmHg以上の低下が認められる


●まずは減量と運動を行う

減量のためには、摂取エネルギー量を適正な量にします。まず、「身長(m)×身長(m)×22」の計算式で標準体重を求めます。 さらに、肥満がある人の場合は、その標準体重を25倍することで、 1日あたりの適正摂取エネルギー量(kcal)を求めることができます。 運動も血圧を下げるのに効果的です。 ウォーキングなどの有酸素運動を、1日に30分以上行いましょう。 運動をして心拍数が上がると、それが刺激となり、利尿作用のある「ANP(心房性ナトリウム利尿ペプチド)」 が心臓から分泌されます。それにより余分な塩分と水分が尿として排泄されます。 また、運動で血管の血液量が増えると、その刺激で血管の内側の細胞から、 血管を広げる作用を持つ「NO(一酸化窒素)」が分泌されます。 つまり、運動は血管収縮タイプにも血液量過剰タイプにも有効なのです。

【関連項目】: 『運動』 / 『ダイエット』

●睡眠時間にも気を付ける

寝ている間は交感神経の働きが抑制されるので、睡眠は大切です。睡眠時間が7~8時間の人と比べると、 6時間睡眠だと高血圧の頻度は1.18倍に、5時間睡眠だと2.10倍になります。
肥満がある人は「睡眠時無呼吸症候群」にも注意が必要です。 これは、寝ている間に気道が塞がり、呼吸ができなくなるものです。このとき、呼吸を再開させようとして 脳が半覚醒状態になるため、無呼吸状態が繰り返されると、気付かないうちに睡眠不足に陥ってしまいます。 そのことによって交感神経が活発になり、血圧が高くなるのです。



■血圧が下がらなかった場合

高血圧のタイプに合った薬を服用する

生活習慣の改善で十分に血圧が下がらなければ、薬による治療を検討します。 血管を広げることで血圧を下げる「カルシウム拮抗薬」は、血管収縮タイプと血液量過剰タイプの両方に効果的です。 血管収縮に関係するレニンやアンジオテンシンの働きを抑制する「ARB」「ACE阻害薬」が使われることもあります。 脈が速いなど交感神経が過激な血管収縮タイプの場合には、「交感神経抑制薬」も効果的です。 これらの薬のうち、まずは1種類を飲むことから始めます。
加齢に伴って腎臓の働きが低下すると、体内に塩分がたまりやすく、血流量過剰タイプの要素が高まります。 この場合、塩分などを排泄する働きのある「利尿薬」を追加することがあります。

【関連項目】:『高血圧症の薬物療法』