アガリクス

アガリクス(学名:アガリクス・ブラゼイ・ムリル)』は、 和名でヒメマツタケまたはカワリハラタケとも呼ばれるブラジル原産のキノコです。 アガリクスは、β-グルカンという多糖類を含みます。 キノコ特有の成分であるβ-グルカンには抗癌作用があり、抗癌作用に関する基礎研究では「アガリクスで癌が治った」という臨床試験が数多く報告されています。 また、糖尿病脂質異常症高血圧など生活習慣病への効果も示されています。 ただし、アガリクスは品質にばらつきがあり、臨床試験もまだ十分ではありません。 ただし、βグルカンは、、大別すると「βグルカン(1-3)」と 「β(1-6)グルカン」の2種類がありますが、 このうち、抗癌作用があるといわれているのは、 βグルカン(1-3)のほうで、β(1-6)グルカンについては抗癌作用がほとんど期待できないともいわれています。 アガリクスはβ(1-6)グルカンのみで、ある実験によっても抗癌作用が認められない、という結果も出ています。


■「アガリクス」とは?

他の植物に比べ格段に高いβ-グルカンの免疫力

「アガリクス」とは、学名を「アガリクス・ブラゼイ・ムリル」、和名を「ヒメマツタケ」というキノコの一種です。 もともとはブラジルのピエダーテ地方に自生しており、地元では「神のキノコ」と呼ばれています。 このキノコが注目されるようになったのは、アガリクスを常食とするピエダーテ地方の人々の成人病発生率が極端に低かったことを 不思議に思ったアメリカ・ペンシルバニア州立大学教授・W・J・シンディ博士とランバート研究所のE・B・ランバート博士らが研究を開始し、 制癌作用などの薬効に関する研究発表を行ったことがきっかけです。 その後、多くの医学学会でアガリクスに関する研究発表が報告され、 アガリクスには、主成分である 「βーグルカン」や リン脂質、各種 ミネラルビタミン酵素などの貴重な成分が多く含まれており、 他の植物に比べ免疫力を高める作用が格段に高いということがわかり、癌などの難病にも効果があると報告されました。 他に食物繊維や、多糖類、カルシウムの吸収を助ける ビタミンDなどの成分も確認されています。

実話としては、レーガン元大統領の皮膚癌治療にアガリクスを使用したところ、大統領の皮膚癌は完治した、という話があります。 日本においてもアガリクスに関する研究発表が、日本癌学会や日本薬理学会で行われ、 アガリクスの多糖体の中にはインターフェロンの産生を活性化する作用があり、ウイルスの侵入を防ぐ力も強いことが証明されています。 ただし、アガリクスの有効性を証明する研究がある一方で、「そのような効果はない」という研究者がいることもまた事実です。 しかし、化学療法などによる副作用が問題になっている現在、アガリクスの食効による代替療法は、 多少の問題を残しながらも今後ますます注目されていくでしょう。


●期待される効果

癌の発生予防。癌細胞の増殖抑制作用。癌治療に伴う副作用を軽減する作用。抗癌治療との併用により抗癌作用を増強する効果。 糖尿病の予防や改善。 脂質異常症高血圧の予防や改善。

●作用メカニズム

アガリクスには、β-グルカンなどの多糖類の他、ビタミンやミネラル、リノール酸やパルミチン酸といった脂質などが含まれています。 特に、抗癌作用のあるβ-グルカンは、キノコ類の中でも最多と考えられます。 また、エルゴステロールなどの脂溶性成分も抗癌作用を持ちます。


●科学的根拠

アガリクスは、免疫担当細胞の働きを活発にすることで、体が本来持っている抵抗力を高め、抗癌作用を発揮します。 まずアガリクスは、白血球の中のマクロファージという細胞を活性化し、サイトカインという生理活性物質の産生を促します。 アガリクスによってTNF-α(腫瘍壊死因子α)と呼ばれる サイトカインが産生され、 TNF-αは腫瘍を壊死に導いたり、リンパ球を刺激して免疫力を高めたりします。 また、NK(ナチュラルキラー)細胞の作用を介して 免疫力を高めるというデータもあります。
基礎研究分野では、アガリクスの免疫賦活作用や抗癌作用など多彩な効果を示すデータが、多数報告されてきました。 また、臨床研究として、アガリクスの抗腫瘍効果を示した症例報告は、これまでに数多く報告されています。 しかし、ヒトを対象にした厳密な臨床試験はまだ行われていません。 なお、卵巣癌等の婦人科領域の癌患者100名を対象にしたランダム化(無作為化)比較試験(RCT)では、 アガリクス抽出物投与により化学療法時におけるQOL(生活の質)改善作用を認めたそうです。 日本からの症例シリーズでは、肝癌切除後患者40名にアガリクス抽出物を2年間投与した結果、肝癌再発に関して有意差は示されていません。 一方、肝機能等の指標では、安全性に関してアガリクスの問題点は認められなかったことから、少なくとも、手術の適応になる程度の肝機能および 全身状態であればアガリクスの許容性(認容性)は高いと考えられました。 アガリクスは特定の癌に効くというのではなく、体の持つ自己免疫力を高めることで癌を予防します。
糖尿病治療薬を服用中の2型糖尿病患者にアガリクス抽出物を併用投与したランダム化二重盲検偽薬対象試験において、 血糖コントロールの改善、インスリン抵抗性の改善、 血漿アディポネクチン(脂肪から分泌される善玉のホルモンで、 動脈硬化を抑制する作用を持つ)値増加という作用が報告されています。

●摂取方法

癌予防効果を得るためには、継続して摂取します。アガリクスは、かつては非常に高価な健康食品でしたが、1990年代初めに栽培方法が確立され、 現在ではブラジルや日本の他、中国や韓国などで作られています。 サプリメントとしてのアガリクスは、錠剤や顆粒の製品、キノコ自体の乾燥品などがあります。 一般に、品質の差が大きいので、サプリメントに詳しい医師に相談するか、信頼できるメーカーの製品を用いるようにします。

●注意事項

通常の食材に近い成分であり、問題となる健康被害や副作用は知られていません。 アガリクスに関連する有害事象報告がごく少数認められますが、それらは、個別の製品の品質管理における問題が疑われます。 他のサプリメントや医薬品との相互作用は報告されておらず、使用は問題ないと考えられます。 ただし、治療と併用する場合には、まず医師に相談するようにします。 アガリクスに関する有害事象報告は散見されますが、それらは①個別の製品の品質管理における問題、②アレルギー性メカニズム、 ③薬物代謝能における個人差が原因と考えられます。 ただし、国立医薬品食品衛生研究所で実施された毒性試験(中期多臓器発癌性試験)において、 「細胞壁破砕アガリクス顆粒」製品に発癌プロモーション作用が認められたため、該当製品が回収されました。 したがって、アガリクスの用法・用量にはさらに検討が必要と考えられます。 なお、2006年、アガリクス含有食品の一製品において発癌プロモーション作用が認められたという厚生労働省の発表があり、該当製品が自主回収されました。 その後、食品安全委員会が審議を実施し、厚生労働省は2009年7月3日付で通知を行いました。 それによると「平成18年通知の発表以降、アガリクスを含む製品について、自治体等から当省に対し、健康被害に対する報告はない」とされており、 事実上の安全宣言と理解されています。ただし、厚生労働省においては引き続き、食品衛生上の危害の発生を防止するために必要な情報を収集すべきである、とされました。 現時点では、伝統医療で用いられてきた抽出法による製品であれば問題は生じにくいと推察されますが、特殊な製造法による製品には留意が必要と考えられます。 有害事象を生じうる原因物質の候補として、アガリクス含有製品の一部に多く見出だされているアガリチンという物質が想定されています。 ただし、因果関係は必ずしも明確ではありません。