高齢者の高コレステロール血症の治療

65歳以上の高齢者では、生活習慣が基本なのは若い人と同じです。 生活習慣の改善が難しい場合、冠動脈疾患発症のリスクを十分考慮し、早期から薬を使うこともあります。 また、65歳以上の高齢者では、日常生活を送るうえでの活動レベルに、大きな個人差が出てきます。 そのため、一人一人に合った治療を行うことがより重要になります。 さらに、治療をうまく進めるためには、周囲の人の協力も欠かせません。


■65歳までの治療の基本

自分のできる範囲で生活習慣の改善を行う

高齢者であっても、治療の基本は、食事や運動などの生活習慣の改善にあります。 ただ、長年食べ慣れた食事を変えるのは、なかなか難しいものです。 また、運動したくても、腰や膝が痛かったりして、思うようにできない人もいるでしょう。

●体重計に乗る

肥満があれば、まずは体重を減らすことが何よりも重要です。 食生活の改善や運動で減量することが望まれます。 それらがなかなか思うようにできない場合は、こまめに体重計に乗ることを習慣づけるとよいでしょう。 自分の体重を常にチェックし、記録しておくことで、減量の必要性を自覚でき、減量の成果がわかって励みになります。 自分の体重を1つの目安にして、無理をせず、できる範囲で食生活を改善して、運動を行いましょう。

■食事は摂取エネルギー量と栄養バランスの見直しを

どの年代の人でも、食生活の改善の基本は同じです。適切な摂取エネルギー量と栄養バランスを心掛けます。 長年の食習慣を変えるのは大変でしょうが、一度これまでの食生活を見直し、できる部分から改善していきましょう。 元気な人の場合は特に、65歳未満の人と同じように食生活を管理して、その状態を維持するように努めてください。 自分で調理をしている人なら、摂取エネルギー量や栄養バランスを自分自身でコントロールしやすいのですが、 家族などに頼り、自分では調理をしていない人も少なくないでしょう。 このような場合には、食事を作っている人に適切な摂取エネルギー量や栄養バランスを知ってもらい、 協力を仰いでください。

●歩ける人は歩こう

腰や膝などの病気がなく、元気な人は、65歳未満の人と同じように、 「ウォーキング」などの有酸素運動と、 可能ならば「腹筋運動」や「スクワット」などの軽い 「筋力トレーニング」を習慣にしましょう。 腰や膝などに痛みがある人や、肥満がある人などは、できる範囲でなるべく歩くことを心掛けましょう。


■なぜ薬物療法が行われるかをきちんと理解することが大切

高齢者の場合、食生活の改善や運動が十分に行うことができないため、生活習慣の改善だけでは脂質の値を改善することができず、 早期から薬物療法を始めることが多いのが実情です。 薬物療法の目的は、冠動脈疾患や脳梗塞の予防だということをよく理解し、医師や薬剤師の指示通りに服薬してください。 薬物療法を始めても、生活習慣の改善はできる限り継続しましょう。 生活習慣を改善しながら薬を使用したほうが、脂質の値を改善でき、冠動脈疾患や脳梗塞の予防効果が高まります。 生活習慣の改善は、他の生活習慣病を防ぐためにも大切です。

●適切な摂取エネルギー量

標準体重×25~30(kcal)
(標準体重[kg]=身長[m]×慎重[m]×22)

●適切な栄養バランス

炭水化物・・・・・60%
たんぱく質・・・・・15~20%
脂肪・・・・・20~25%
(コレステロール 1日300mg以下)
食物繊維・・・・・25g以上
アルコール・・・・・25g以下
その他の栄養素
・ビタミン(C、E、B6、B12、葉酸など)
・ポリフェノール


■高齢者は薬の副作用が起こりやすいため、より注意が必要

脂質異常症の治療で使用される薬は、比較的安全性が高いとされています。 それでも高齢者の場合は、薬を代謝・排泄する肝臓や腎臓の機能が低下していることが多いので、少ない量から始めます。 そして、効果を見ながら、使用料を調節していきます。

●副作用により注意が必要

安全性が高いとはいえ、高齢者の場合、副作用は起こりやすくなります。 高齢者で気を付けたい副作用が、一部の薬で現れることがある「便秘」です。 便を柔らかくする薬を併用すれば、症状を緩和できるので、便秘があったり、 薬を飲み始めてから便秘に悩まされるようになった人は、担当医に相談してください。
稀に、筋肉が障害される「横紋筋融解症」という副作用が現れることがあります。 また、どのような薬にも、肝機能を低下させる可能性はあります。 定期的に通院し、副作用が現れていないかどうかのチェックを受けてください。