ブドウエキス
(赤ワインエキス)

心臓病を防ぐという効果のため、赤ワインがブームになったことがあります。 赤ワインの抗酸化成分である ポリフェノール動脈硬化を抑制し、心臓病を防ぐという説です。 また、不老長寿の妙薬といわれる長寿たんぱく「サーチュインを体内で増やすためには、 ポリフェノールの一種の紫色の色素成分 レスベラトロール を摂取することが有効といわれ、レスベラトールを効率的に摂るには、赤ワインエキスが効果的です。


■赤ワインエキス

●期待される効能

動脈硬化の予防や抑制。 心臓病(狭心症や心筋梗塞などの虚血性心疾患)予防。

●作用メカニズム

赤ワインには、ブドウに由来するファイトケミカル、 特にアントシアニンが豊富です。 また、カテキンレスベラトロールなども含まれます。 赤ワインの心臓病予防効果は、これらのファイトケミカルが 活性酸素による LDL(悪玉コレステロール)の酸化を防ぎ、 動脈硬化を抑制する結果と考えられます。 アントシアニン類は、ブドウの皮や種子に含まれる青紫色の色素成分です。 そのため、白ワインよりも赤ワインのほうが強い抗酸化力を示し、動脈硬化を抑制します。

●科学的根拠

ワインを大量に消費するフランスでは、「フレンチ・パラドックス(フランスの逆説)」という事実が知られています。 フランス人は、欧米型の食事に加えて喫煙率も比較的高いため、心臓病も比較的高いはずです。 しかし、実際には、心臓病による死亡率は、欧米の中では非常に低いのです。この矛盾をフレンチ・パラドクスといいます。 ただし、フレンチ・パラドックスは、赤ワインの効果だけではなく、オリーブオイルや野菜の豊富な地中海料理にあると考えられます。 また、2003年に、ドイツから報告された研究では、フランス産の赤ワインが、「NO(一酸化窒素)」という血管を拡張させる分子を、 血管内皮細胞から放出させることが示されました。これも、赤ワインが血管を詰まりにくくするメカニズムの1つです。

●摂取方法

赤ワインのポリフェノールを抽出したノンアルコールの成分が、サプリメントとして利用されています。 サプリメントには、赤ワインエキスにブドウ種子の抽出物を加えて主成分とする製品や、 赤ワイン以外のポリフェノールを合わせた成分を製品化したものなどがあります。

●注意事項

通常の食材に由来する成分であり、問題となる健康被害や副作用は知られていません。 ほかのサプリメントや医薬品との相互作用は報告されておらず、併用は問題ないと考えられます。


■レスベラトロール

病気にかかりにくく死亡率も低下

近年、ブドウに多いポリフェノール(植物の色素成分)の一種 「レスベラトロール」の優れた効果が注目を集めています。 レスベラトロールは、 活性酸素を消す効力が大きいことが知られています。 活性酸素を消すことによって、血液中の悪玉コレステロールの酸化を抑え、 動脈硬化を改善します。 また、血液中の血小板が集まるのを抑えて、血栓ができるのも防ぎます。 そうした働きから、レスベラトロールは、心臓病や 脳卒中の予防・改善に有効と考えられているのです。 さらにレスベラトロールには、優れた抗癌作用があることもわかってきました。

そんな中で、最近特に注目を集めているのが、不老長寿の妙薬となりうる体内のたんぱく質 「サーチュイン長寿たんぱく)」を増やす働き。 長寿たんぱくサーチュインは、食事制限や運動など、体に何らかの負担をかけることで増えるという性質がありますが、 レスベラトロールを摂ることでも増やせることがわかってきたのです。 レスベラトロールが生物の寿命を延ばす働きについては、さまざまな実験が行われています。 中でも、2006年に行われた米国ハーバード大学や米国加齢研究所などの実験は、世界中の注目を集めることになりました。

実験では、マウスを
①高カロリー食だけを与えるグループ
②高カロリー食とレスベラトロールを与えるグループ
③標準食を与えるグループ
を与えるグループの3つに分けました。

実験の結果、①のマウスは肥満になったばかりか、心疾患や肝臓障害を起こして死亡するものが多くいました。 これに対し、②のマウスは、肥満にはなったものの、病気にはかかりにくく、心臓や肝臓の異常も少なかったのです。 さらに、生後114週(マウスの寿命は108週)での死亡率は、①が58%、②と③が42%で、②と③は、①より約3割低いこともわかりました。 レスベラトロールには、健康に役立つさまざまな効果があるため、こうした実験の結果が、 長寿たんぱくサーチュインが増えたことだけによるものなのかは、詳しいことはわかっていません。 とはいえ、レスベラトロールを摂れば、若さと健康を保てるということが明らかになったわけです。 今後もレスベラトロールは、ますます注目を集め、研究も進められていくものと考えられます。


■新型ブドウエキス

吸収率を高めた「新型ブドウエキス」

レスベラトロールの働きが世界中から注目される中、ブドウの種からレスベラトロールを高濃度に抽出した「新型ブドウエキス」が話題を集めています。 実は、レスベラトロールは、分子の構造が不安定なため、胃の中の残留たんぱく質や胃酸で分解されたり壊れたりする心配がありました。 また、レスベラトロールは脂溶性(油に溶ける性質)のため、体内に吸収されにくいという欠点も指摘されています。 ところが、ブドウの種を発芽させてレスベラトロールを抽出し、それに糖分子を結合させると (配糖体という)、分子の安定性が増すことが明らかになりました。 そればかりか、脂溶性だったレスベラトロールが水溶性(水に溶ける性質)になることもわかったのです。 分子の安定性が増すと、胃で壊れたり分解したりすることがなく、体内にそのまま吸収されるようになります。 しかも、水溶性のため、体内への吸収率が飛躍的にアップし、体の隅々まで到達し、全身の細胞の働きを活発にする効果が期待できるのです。 ちなみに、新型ブドウエキスには、レスベラトロールのほかにも、 豊富なポリフェノールが含まれています。 これらのポリフェノールも配糖体になることによって、構造が安定して吸収されやすくなると考えられています。 このため、新型ブドウエキスを摂れば、レスベラトロールをはじめとしたさまざまなポリフェノールが体内で働き、 若返りや健康維持といった、多くの効果が期待できるのです。


■ブドウエキス関連項目

「サーチュイン長寿たんぱく)」
「サーチュイン(長寿たんぱく)」は、生物の体内で作られらるたんぱく質の一種で、 最近の遺伝子研究によって不老長寿の妙薬となりうることがわかり、大きな話題を集めています。

「レスベラトロール」
「レスベラトロール」は、活性酸素を消す効力が大きいことが知られています。 活性酸素を消すことによって、血液中の悪玉コレステロールの酸化を抑え、動脈硬化を改善します。 また、血液中の血小板が集まるのを抑えて、血栓ができるのも防ぎます。 そうした働きから、レスベラトロールは、心臓病や脳卒中の予防・改善に有効と考えられています。 さらにレスベラトロールには、優れた抗癌作用があることもわかってきました。