梅肉エキス

梅肉エキスは、青梅の果肉を煮詰めた酸味の強いペースト状の食品です。 梅肉エキスの原料である梅には、 脳梗塞心筋梗塞を防ぐさまざまな有効成分が含まれており、 血液をサラサラにして 動脈硬化を予防する働きがあるといわれています。 また、梅は、 やC型肝炎を予防・改善したり、 ピロリ菌を退治する働きにも優れていることもわかってきました。


■梅に含まれる血液浄化成分

一般に梅の薬効といえば、食中毒の予防・疲労回復・健胃といったところがなじみ深いでしょう。 ただし、最近特に注目されているのは、血液を浄化してサラサラにする働きです。 血液を浄化する梅の働きとしてまず挙げられるのが有機酸の一種である「クエン酸」。 クエン酸を摂ると、「クエン酸サイクル」という体内の化学反応が活発になります。 クエン酸サイクルは、糖をエネルギーとして燃焼させたり、体内にたまった乳酸などの老廃物を排出する仕組み。 血液中に糖や乳酸がたまれば、血液はドロドロになります。 つまり、クエン酸サイクルが活発になれば、血液中の糖や乳酸が減って、血液がサラサラになるのです。 しかも、クエン酸は 活性酸素を消す効果も抜群。 活性酸素が消えれば、血液中のコレステロールの酸化が抑えられ、 動脈硬化の予防に役立ちます。

次にあげられるのが、 カルシウムカリウム、リンなどの「ミネラル」。 特にカリウムは過剰なナトリウム(塩分)を体外に排出し、血圧を正常に保つために欠かせません。 さらに、「ムメフラール」という成分も、血液浄化に役立つことが明らかになりました。 ムメフラールは、梅を加熱することによって生じます。 和歌山県立大学やみなべ町などの研究グループによって見出された「シリンガレシノール」という梅特有の抗酸化成分にも、 血液を浄化する優れた働きがあるということです。


●ムメフラール

ムメフラールは、過熱によって梅の糖とクエン酸が結合し、生み出される成分で、 ムメフラールの血液浄化の働きは主に二つあります。
一つ目は、血小板という血液成分が固まるのを抑える働き。 ケガや外部からの衝撃などで血管が傷つくと、血液が固まって傷口をふさぎます。これは血小板の働きによるもの。 しかし、血小板のこうした働きが過剰になれば、血管内で血栓ができやすくなります。 すると、最悪の場合、血管を詰まらせて、脳梗塞や心筋梗塞を引き起こすのです。 ムメフラールは、血小板の働きを適度に抑え、血流をよくするのです。 二つ目は、血液成分である赤血球の変形能を改善する働き。赤血球は、毛細血管を通り抜けて、体の隅々に酸素を運ぶ役割を果たしています。 毛細血管の直径は赤血球の大きさよりも小さいため、赤血球は、自らの形を変える能力を備えています。 この能力が変形能。ところが、赤血球の変形能が低下すれば、血液はドロドロになり、血流が滞ります。 ムメフラールは、赤血球を柔軟にして変形能を高め、血行を促すのです。


■血液中の糖や脂肪も梅を摂れば減る

実際に、梅の血液浄化の効果は、これまでのさまざまな研究によって明らかにされています。
三重大学医学部などの研究グループは、 高血圧になりやすいネズミを使った実験で、梅が高血圧を抑えることを確かめました。 実験では、梅が含まれたエサを与えるグループと、梅が含まれないエサを与えるグループにネズミを分けました。 3週間後にネズミの血圧を測ったところ、梅を摂ったネズミは、摂らなかったネズミに比べ血圧が平均で20ミリ程度低かったということです。

和歌山県立大学や横浜私立大学などの研究グループは、 梅が動脈硬化を抑えることも実験によって証明しました。 動脈硬化の原因物質の一つにアンジオテンシンⅡというホルモンがあります。 アンジオテンシンⅡは、血管を収縮させるのが本来の役割ですが、過剰に働けば、血管の筋肉細胞を増殖させ、血管壁を詰まらせてしまいます。 その結果、血流が妨げられ、動脈硬化を引き起こすというわけです。 実験では、ネズミから取り出した血管の筋肉細胞に、アンジオテンシンⅡと梅の成分を与えました。 すると、梅の成分を与えなかった場合に比べ、血管の筋肉細胞の増殖が半分程度に抑えられたそうです。 同研究グループの実験によって、梅には、血液中の糖を減らす働きがあることもわかりました。 糖尿病のネズミに梅を与えたところ、7週間後にネズミの血糖値が正常になったそうです。 このほか、同研究グループは、梅が コレステロールや中性脂肪などの血液中の脂肪を減らすことも、実験で確認しています。

このように、血液浄化力が大きい梅を摂れば、ドロドロ血液が解消され、 脳梗塞心筋梗塞の予防・改善も期待できるでしょう。


■トリテルペノイド

上記のように、梅には血液浄化に優れた働きのあることが、これまでの研究でわかっています。 さらに、最近、ドロドロ血液ばかりか癌やC型肝炎まで予防・改善する梅に特有の成分が見つかりました。 それがトリテルペノイドです。 トリテルペノイドは、梅干・梅ジュースといった梅の日常食品に、ごく微量だけ含まれていますが、梅肉エキスには、比較的多く含まれていると考えられます。 トリテルペノイドの主な働きは「悪玉化」した顆粒球を減らすことです。 顆粒球とは、血液成分である白血球の一種で、免疫力を担うのが本来の役割。 顆粒球は通常、3~4日で死滅します。ところが、過剰なストレスや紫外線を受けると、顆粒球は変質して死滅しなくなり、どんどん増えていきます。 悪玉顆粒球は、柔軟性がなく血液をドロドロにするうえ、活性酸素を撒き散らして、細胞の癌化や動脈硬化を進めます。 しかも、癌細胞やウィルスを退ける主役であるリンパ球まで減らしてしまうのです。 トリテルペノイドは、こうした悪玉顆粒球を自殺に導くことによって、癌や動脈硬化・感染症の発病・進行を抑えるのです。 実際に、トリテルペノイドは、全国のさまざまな医療機関で、 膵臓癌や肝臓癌・ 食道癌などの治療に役立てられています。


■梅ジュース

水分と血液浄化成分が同時に摂れる

脳梗塞心筋梗塞の主原因は 動脈硬化で、 血液がドロドロになると動脈硬化が進み、脳梗塞や心筋梗塞を引き起こすと考えられています。 ドロドロ血液を解消して、脳梗塞や心筋梗塞を防ぐには、こまめな水分の補給とともに血液を浄化する食品を積極的に摂ることが肝心です。 そこで、お勧めなのが梅ジュース。 梅ジュースを飲めば、水分と共に、血液浄化に役立つ梅の有効成分が摂れます。 梅ジュースには、梅酒と違ってアルコールが含まれていません。 お酒が苦手な人でも、子供でも、手軽に美味しく飲めることが利点の一つといえるでしょう。

梅の薬効は、古くから知られ、約2000年前に書かれた中国の医学書『神農本草経』にすでに記されています。 日本でも、梅は食品や薬品として、昔から親しまれてきました。 最近まで、ほとんどの家庭に梅干が常備されていたことは、皆さんもご存知かと思います。 今では梅干や梅漬け、梅酒といった伝統食品のほかにも、梅ジャム、練り梅などが登場し、食品としての用途は広がっています。


●梅ジュースの作り方

梅肉エキスから作るのがお勧め

梅ジュースは手作りもできるのですが、生梅から梅ジュースを作ろうとしても、生梅の入手時期は限られています。 そのため、生梅を入手できない場合、梅ジュースを手作りするのであれば、梅ジャムや練り梅などの食品を使うしかありません。 梅ジャムや練り梅から作った梅ジュースも、さわやかな風味があって美味しく、ドロドロ血液の解消にも有効です。 しかし、梅ジャムや練り梅から作った梅ジュースは、残念ながら、生梅から作るジュースに比べ、血液浄化の効力が低下します。 なぜなら、梅を加工したり、保存したりするうちに、有効成分が減ってしまうからです。 そこで、梅ジュースの原料としてお勧めなのが「梅肉エキス」。 梅肉エキスは、青梅の果肉を皮と一緒にすりおろし、長時間煮詰めたもので、見た目は黒くて酸味が強く、トロリとした粘り気があります。 梅肉エキスの薬効は大変大きく、血液浄化力は梅干の約30倍、抗菌力は約10倍あると考えられています。 慶応大学の栗原教授らの研究によれば、梅肉エキスは、100種類以上の食品の中で、血液浄化の効力が、 黒酢に次いで2番目に大きかったそうです。

梅肉エキスには、クエン酸をはじめとするさまざまな成分が凝縮されています。 しかも、梅を煮詰める途中で、血液浄化の特効成分「ムメフラール」が生み出されます。 ムメフラールは、先述したように、加熱によって梅の糖とクエン酸が結合して生み出される成分なので、 生梅や梅干には含まれておらず、梅ジャムなど加熱した食品にのみ含まれます。 とりわけ、生梅を長時間煮詰めて作った梅肉エキスは、ムメフラールの宝庫といえるでしょう。

◆梅肉エキスから梅ジュースを作る

梅肉エキスを使った梅ジュースの作り方はとても簡単。 小さじ1杯分(約3g)の梅肉エキスを、コップ1杯程度の水やお湯、あるいは炭酸水で割るだけです。 梅肉エキスは、酸味がとても強く、甘みがないので、蜂蜜や黒砂糖を適量加えると飲みやすくなるでしょう。 梅肉エキスのジュースを毎日飲む場合、ジュースをすぐに作れる「ジュースのもと」を一度に作り置きしておくと便利です。 コップ1杯分の水に梅肉エキスを小さじ3~5杯、蜂蜜を適量入れてよくかき混ぜます。 後は好みに応じて、水や炭酸水で割って飲んでください。 もちろん、梅ジャムや練り梅に、梅肉エキスを混ぜ合わせても、美味しい梅ジュースが仕上がります。 皆さんも、ぜひ梅ジュースを活用して、ドロドロ血液を解消して下さい。