運動で増やそう善玉コレステロール

●HDLコレステロールは、運動をすればするほど増やせる。
●速歩きなどの有酸素運動を、できるだけ毎日続けるとよい。
●屋外での運動が難しい人には「ベンチステップ運動」などが勧められる。


■運動の効果

主にHDLコレステロールの値が改善する

動脈硬化に関わる血液中の脂質には、主に動脈硬化を進める「LDLコレステロール」と、 動脈硬化を抑える「HDLコレステロール」があります。 また、LDLコレステロールの味方をし、一方でHDLコレステロールには敵のように働いてその数を減らす「中性脂肪」も、 血液中の脂質の1つです。これらのうち、HDLコレステロールだけは、「食事」で値を改善させることができません。 しかし、適度な「運動」を習慣化することで増やすことができます。 ある調査では、1日の歩数が多ければ多いほど、HDLコレステロール値が高くなることがわかっています。

◆他の脂質と運動の関係

HDLコレステロールと中性脂肪は”シーソー”のような関係にあるため、運動によってHDLコレステロールが増えれば、 中性脂肪は減ることになります。それにより動脈硬化の進行を防ぎ、「冠動脈性疾患」などのリスクを下げることができます。 ただし、LDLコレステロールの場合、運動での減少効果は望めません。 しかし、別の理由で動脈硬化の進行を抑えられるため、運動には大変大きな意味があります。 具体的には、体中の血流がよくなって血栓ができにくくなったり、血圧や血糖値をコントロールできたり、 ストレスの解消になるなどの効果があります。これらにより、冠動脈疾患を多面的に予防することもできるので、 LDLコレステロール値だけが高い人も、積極的に運動しましょう。


●運動の方法

速歩きやジョギングなどの有酸素運動が勧められる

運動の中でも特に効果的なのは、速歩きやジョギングなどの「有酸素運動」です。 少し息が切れるくらいの「ややきつい」と感じる程度の速さで、1日30分以上行うことが勧められます。 一度に30分以上運動するのが難しい場合は、10分間を3回行うなど、小分けにしてもかまいません。 これをできれば毎日、できれば週に180分以上継続していくのが効果的です。 加齢などにより筋力が低下している人は、筋力をつける運動も加えることが勧められます。 太ももの前側にある「大腿四頭筋」の筋肉量が多いと、、寿命が長くなることがわかっています。
運動には多くの利点がありますが、「膝や腰に痛みがある人」「心臓に病気がある人」は、必ず担当医に相談してから 始めるようにしてください。また、運動中には無理をせず、体調に異変があればすぐにやめて、担当医に相談してください。

◆ベンチステップ運動

”毎日屋外で歩くのは難しい”という人に勧められるのが、「ベンチステップ運動」です。 これは、20cmほどの高さ(体力に自信のない人は10cmでもよい)の台を上り下りする運動です。 上って下りるまでを1サイクルとして、1分間に20サイクルほど、毎日行いましょう。 お尻や太ももの筋力をつけることもできます。

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◆日常生活での”身体活動”もよい

日常生活での動作(身体活動)にも、運動効果があります。例えば「掃除機をかける」「台所の作業をする」 「一緒に遊んだりして子供の世話をする」などを約20分行えば、速歩きなら約15分間、ジョギングなら約10分間行ったのと同等の運動量になります。 特別に運動をする時間を作るだけでなく、日頃から意識して、日常生活を活動的に過ごすことが大切です。


●禁煙

血液中の脂質の値や、血管などへの悪影響を断ち切る

食事や運動のほか、非常に重要な生活習慣の改善が「禁煙」です。 タバコには様々な有害物質が含まれており、それによりHDLコレステロールが減ってきます。 喫煙でもLDLコレステロールの数が増えることはありませんが、血管壁に入りやすい”超悪玉コレステロール” に変質しやすくなります。また、喫煙すると血管が収縮するため、それを繰り返しているうちに血管がしなやかさを失い、 血栓もできやすくなります。さらに最近では、喫煙者は「糖尿病」を発症しやすいこともわかってきています。 喫煙を続けているとこれらの悪影響が積み重なり、動脈硬化の進行によるさまざまな病気に直結していきます。

◆1日も早くやめることが大切

”長く喫煙しているから、今更やめても意味がない”と思っている人がいるかもしれません。 しかし、いくら喫煙年数や本数が多くても、禁煙した時点から心筋梗塞などのリスクは少しずつ減っていきます。 家族などへの受動喫煙の影響もあるので、今すぐに禁煙しましょう。


●薬物療法

危険因子などが多い場合などに、脂質の値の改善を助ける

生活の改善を行っても、血液中の脂質の値が改善しなかったり、冠動脈疾患のリスクが高い場合などは、 薬物療法が行われることがあります。用いられる薬は、血液中の脂質の状態によって異なります。

▼LDLコレステロール値が高い場合
まず選択されるのが「スタチン」です。スタチンには、肝臓がコレステロールを合成するのを抑える作用や、 血管壁にたまったコレステロールを減らす効果があります。 スタチンでは値が十分に改善しない時は、小腸でのコレステロールの吸収を抑える「エゼチミブ」などを使用することがあります。

▼中性脂肪値が高く、HDLコレステロール値が低い場合
肝臓での中性脂肪値の合成を抑え、分解を促進する作用のある「フィブラート系薬」などを用います。 注意が必要なのは、スタチンとフィブラート系薬には、筋肉が壊死する「横紋筋融解症」が起こる可能性があることです。 数万人に1人起こるまれな副作用ですが、「こわばる」「痛む」「力が出ない」など、筋肉に違和感があった時は、 すぐ担当医に相談してください。