足のしびれの診断と治療
保存的治療で、ほぼ9割の患者さんに改善が見られる
■足のしびれの診断
椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症が疑われた場合、神経症状を調べる検査が行われます。 仰向けに寝て、脚の上がる高さを見る「神経根刺激テスト(SLRテスト)」のほか、 アキレス腱をゴム製のハンマーでたたいて反射の程度を調べたり、足の指に力が入るかどうかによって脚の筋力の程度を 調べたりします。さらに、「エックス線検査」や「MRI(磁気共鳴画像)」などの画像診断も行います。
■足のしびれの治療
診断が確定すると、まず、痛みを軽減し、生活に支障を来さない程度に体を動かせることを目標にして、 「保存的治療(保存療法)」が原則として3ヵ月間行われます。 保存的治療には、「薬物療法」「装具療法」「温熱療法」「運動療法」などがあり、 これらによって、約90%の患者さんが改善するといわれています。
- ▼薬物療法
- 「非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)」などの痛み止めを使います。 脊柱管狭窄症の場合は、血流を改善する「プロスタグランジン製剤」が、しびれを取るために有効です。
- ▼装具療法
- コルセットなどの装具を用いて、腰にかかる負担を軽減させたり、腰椎を安定させたりします。
- ▼温熱療法
- ホットパックなどを用いて患部を温め、血流を促進させて筋緊張や神経過敏を和らげます。
- ▼運動療法
- 痛みが強い場合は安静を保ちますが、安静にする期間は長くても2~3日で、それ以降は徐々に体を動かすようにします。 安静にする期間が長すぎると、筋肉が萎縮したり、脊柱や関節の動きが悪くなります。 無理のない範囲で、それまでと変わらない生活を送ることが回復につながります。
- ▼神経ブロック療法
- 痛みが非常に強い場合には、局所麻酔薬やステロイド薬を注射する「神経ブロック療法」が行われることもあります。
■手術
体に負担の少ない内視鏡手術が増えている
保存的治療を十分に行っても、「麻痺やしびれなどが神経症状が進行している」「歩行障害が著しい」「痛みやしびれで 仕事や日常生活に支障を来す」などの場合は、手術が検討されます。
●椎間板ヘルニアの手術
一般に行われるのが、後ろ側に飛び出した髄核を摘出する「後方椎間板摘出術」です。 最近では、内視鏡による手術が徐々に増えてきています。内視鏡を使うと背中を切開する範囲が1.5~2cm程度なので、 患者さんの体にかかる負担が少なくて済みます(低侵襲手術)。
●脊柱管狭窄症の手術
一般に行わるのが「椎弓切除術です。また、脊柱管狭窄症に合併して、椎骨と椎骨がずれる「すべり症」 があったり、椎骨が不安定だったりする場合は、「脊柱固定術」を追加する場合があります。
- ▼椎弓の切除術
- 後ろ側へ出ている屋根状の「椎弓」の一部を切除し、熱くなった黄色靭帯を摘出することによって、 神経の圧迫を解消します。最近では、内視鏡を用いた手術も行われるようになっています。 骨を切除した部分は、窓が開いたようになりますが、筋肉により覆われるので、神経が露出することはありません。 また、椎間関節の温存で脊柱の強度は保たれ、前方には椎体や椎間板もあるので、全体的な強度が損なわれることはありません。
- ▼脊柱固定術
- 「椎弓根スクリュー」と呼ばれる金属器具などを用いて椎体と椎骨を固定し、脊柱を安定させます。 さらに、椎体と椎体の間に自分の骨を移植して癒合させ、固定を強化します。 最近多く行われているのが「後方侵入椎体固定術」です。 椎間板に「スペンサー」と呼ばれるメッシュ状の人口材料を入れ、その中に切除した追及を砕いて埋め込み、 上下の椎体を癒合させます。
多くの場合、手術を行うと症状は改善しますが、なかには「思ったより改善しない」「手術後のしびれ感が戻る」 というケースもあります。また、固定用の器具が神経にあたって、神経が傷ついたりするケースも皆無ではありません。 担当医とよく相談して、手術によるメリット、デメリットなどを確認してから、手術を受けるかどうかを検討することが大切です。