脊柱管狭窄症の自力ケア⑤間欠性跛行の改善(1)
『間欠性跛行は歩行中に徐々に進む腰の脊柱管の狭窄悪化が主原因で、神経への血流が滞り発症。
■精神的に追い詰められる人も多い
腰部脊柱管狭窄症(以下、脊柱管狭窄症)と、腰痛を招くほかの病気との最大の違いは、「間欠性跛行」 があるかないかです。腰痛や坐骨神経痛と共に間欠性跛行が現れたら、真っ先に脊柱管狭窄症を疑うべきでしょう。 ある医院のデータでは、脊柱管狭窄症と診断された人の100%に「神経性」の間欠性跛行が認められています。 間欠性跛行とは、歩行中に腰から足にかけてしびれや鋭い痛み、締め付けられるような痛みが生じて 一時的にそれ以上歩けなくなる症状です。少し休めば再び歩けるものの、しばらく歩くとまたしびれや痛みが生じて、 細切れにしか歩けなくなります。間欠性跛行が厄介なのは、社会生活に支障が出ることです。 友人とよく旅行に出かけていた人は「迷惑をかけたくない」と家に引きこもったり、「このまま歩けなくなるのではないか」 と精神的に追い詰められたりする人が少なくありません。 この他にも、横断歩道を渡る途中や駅のホームに電車が到着した時などに間欠性跛行が生じると、車にクラクションを鳴らされたり、 電車に乗り遅れたりしてしまいます。このように間欠性跛行を克服することは、すべての脊柱管狭窄症の患者さんにとって、 最も重要な課題であり悲願でもあると言えます。
●間欠性跛行は狭窄症以外でも起こる
間欠性跛行が起こる原因は、歩行中に脊柱管の狭窄によって脊髄の末端に当たる馬尾や神経根、 神経の血管が断続的に圧迫されるためです。すると、神経への血流が障害され、酸素や栄養が行き渡らなくなって 神経の働きが低下します。その結果、痛みや痺れが現れて足を動かせなくなるのです。 少し休むと再び歩けるようになるのは、そうすることで血流障害が解消され、再び神経に酸素や栄養が行き渡って 神経の働きが回復するためです。
このように、間欠性跛行というと、脊柱管狭窄症の典型的な症状とばかり思われがちですが、 実は閉塞性動脈硬化症が原因の 「血管性」の間欠性跛行もあります。閉塞性動脈硬化症とは、簡単に言えば足に生じる血管の動脈硬化のことで、 足の血流が著しく減少します。症状としては、足に冷えを伴う痛みや痺れが現れ、次の段階で間欠性跛行が生じます。
●神経性は整形外科を受診
両者の最大の違いは、前かがみの姿勢で休んだ時に、症状が回復するかしないかという点です。
血管性の間欠性跛行は、神経が圧迫されているわけではないので、前かがみにならずとも、ただ立ち止まって休むだけで、
足の筋肉に酸素や栄養が供給されてすぐに歩けるようになります。
一方、脊柱管狭窄症による神経性の間欠性跛行は、脊柱管の狭窄によって神経が圧迫されているため、
前かがみになって脊柱管を広げて、神経の圧迫を緩めてやらないと痛みや痺れが消えません。
痛みや痺れに関しては、神経性では足腰全体の広範囲に現れるのに対し、血管性は主にふくらはぎからつま先にかけて現れます。
また、血管性では皮膚が紫色に変色することがありますが、違和感などの異常な感覚が現れるのは稀だとされます。
高齢者は、両者を併発する人もいるので注意が必要です。いずれにせよ、治療の際は、神経性は整形外科、血管性は循環器内科を受診してください。