脊柱管狭窄症の自力ケア②
『脊柱管狭窄症』の痛み・痺れ・間欠跛行を除くには、神経根型・馬尾型のタイプ分けより「部位別・症状別」の治し方こそ肝心。
■先輩患者から学ぶ自分に合う治し方
前ページで述べたように、腰部脊柱管狭窄症(以下、脊柱管狭窄症)は、さまざまな原因が複雑に絡み合って、 症状が広範囲に現れる複合型病態であるため、一筋縄ではなかなか治せない厄介な病気です。 実際、通り一遍の治療では改善せず、整形外科や治療院を次々と渡り歩く「腰痛難民」と呼ばれるような患者さんも 多数生まれています。一方、脊柱管狭窄症を抱えながらも自分の症状と真摯に向き合い、「自分に合う治し方」を 主体的に見つける努力をする人たちもいます。こうした人は大抵、病状が自ずと快方に向かうものです。 脊柱管狭窄症の改善には、先輩の患者さんからノウハウを聞き出し、それを医師が診療経験をもとに反芻して、 後輩の患者さんに役立ててもらう「複診」が大切です。 ここでは、この複診によって得られた「自分に合う治し方の探し方」をご紹介します。
●医師は3タイプに分けて治療を行う
脊柱管狭窄症は一般に、狭窄によって圧迫された神経の種類により、①神経根型、②馬尾型、③混合型の3つのタイプに 分類されます。整形外科医はこの分類をもとに治療計画を立てていきます。
①神経根型は、脊髄から左右に枝分かれした神経根が脊柱管の狭窄によって圧迫され症状が現れるタイプです。 神経根型の特徴は、症状が右脚か左足のいずれかに現れることです。左右片側の腰からお尻、太腿、ふくらはぎ、すね、 足裏までに強い痛みや痺れが現れ、間欠性跛行(細切れにしか歩けなくなる症状)も見られます。 ②馬尾型は、脊髄の末端にあり馬の尻尾のような形状をした馬尾という神経の束が圧迫されて発症するタイプです。 馬尾が圧迫されると、両足にしびれや痛みが現れます。神経根型とは違い、左右両側のお尻や、 お尻から足にかけて麻痺があらわるのが特徴です。このほか、間欠性跛行、お尻回りの冷感・灼熱感など、 さまざまな異常感覚が生じます。また、馬尾は膀胱や直腸の働きを担っているため、残尿感や頻尿、尿漏れ、便秘が現れます。 症状が悪化して自力で排尿・排便ができなくなったら、手術が検討されます。 ③の混合型は少ないものの、神経根型と馬尾型が合併して起こり、両方の型の症状が同時に現れ、治療が特に難しいタイプです。●患者さんの一番の望みは今の痛みからの脱却
脊柱管狭窄症のこの3つのタイプ分けは、病状を把握したり治療計画を立てたりする上で非常に重要ですが、 あくまでも医師側に立った分類でしかありません。タイプがわかっても、患者さんの悩みの解決につながらなければ、 あまり意味がないのです。患者さんは「自分の病気はこれからどうなるのか」「痛みや痺れはなくなるか」 「歩けなくならないか」「いつまで治療を続ければいいのか」などの不安を口にします。 こうした声に耳を傾け、①患者さんが最も知りたいのは、自分が今まさに苦しんでいる火急の痛みや痺れなどの症状を どうすれば取り除けるかに尽きること。②患者さんが最も望んでいるのはその場しのぎの一時的な治療法ではなく、 症状を根本から改善できる自分に合う対処法に他ならないこと、この2つが最も大切だと考えられます。 そこで、次ページ以降では、患者さん一人一人に、自分でできる「部位別・症状別」の脊柱管狭窄症の 自力ケア改善法をお伝えします。