腰痛を徹底改善「ストレスも関係」

・原因が特定できない「腰痛」の一部には、心理的要因が関係している。
・心理的なストレスによって、「慢性腰痛」が起きるケースが少なくない。
・「認知的行動療法」により、前向きに行動することで改善される場合がある。


■心理的要因が起こす腰痛

腰痛が長引く場合などは、ストレスが疑われる

一般に、発症から3ヶ月以上続く「腰痛」を「慢性腰痛」と呼びます。 慢性腰痛を起こす要因には、骨や筋肉に異常がある「器質的要因」、家庭での立ち居振る舞いや職場での労働条件などの 「環境的要因」、そして、鬱や不安などの「心理的要因」があります。 腰痛の原因がはっきりせず、しかも「保存的治療(保存療法)」を受けても痛みが長引く場合には、 心理的要因の中でもストレスが関係している可能性が考えられます。 精神的なストレスが強いと、痛みを抑える脳内物質が放出されにくくなったり、楽しい時には痛みを忘れるような仕組みが うまく働かなくなったりします。
近年、ストレスが原因の腰痛には、「認知行動療法」という治療が有効であることがわかってきました。 考え方を前向きに変える「認知」と、実際にやってみる「行動」を連動させて、痛みの解消を目指します。 認知行動療法は、欧米では腰痛治療として一般的ですが、日本ではまだあまり普及しておらず、 今後大勢の患者さんが受けられるようになることが望まれます。


■認知行動療法

患者さんに応じて個別に解決法を探る

認知行動療法は、もともとうつ病などの精神療法として行われてきました。 「何かにとらわれている」患者さんの場合、そこから脱却することが治療目的の1つとなります。 慢性腰痛の場合、「痛みにとらわれている」ことからの脱却を図ります。 「痛いから何もできない」というマイナス思考から、何かをやってみることにより、「痛みはあっても、できることがある」 という前向きな考え方に変えていきます。認知行動療法は、痛みも含めて、患者さんがマイナス思考に陥っている原因を 1つづつ解決したり、回避する方策を見つけたりして、前向きな気持ちになってもらうことが目的です。

●治療の流れ

認知行動療法では、最初に、患者さんの状態を評価します。さまざまな評価方法がありますが、一例として、 自己報告式の健康状態アンケートによる評価があります。身体、精神、痛みなどの状況について尋ねる質問に対して、 自分のレベルを答えます。その結果を1つの目安である国民標準値と比べて、どれぐらい低下しているかにより、 患者さんの状態を評価していきます。この結果や問診などに基づき、治療方針が決められます。 治療の内容は、患者さんの心と体の状態や生活環境などに応じて変わり、薬物療法や運動療法、心理面のケア、 生活のアドバイスなどの多面的な治療が行われます。そのため、整形外科を中心に、神経精神科、リハビリテーション科、 麻酔科などの複数の診療科の医師や理学療法士、看護師、ケースワーカーなども連携して治療に当たります。


■薬物療法

慢性腰痛の治療で使われる薬には、つぎのようなものがあります。

▼非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)
もっとも一般的な痛み止めです。急性と慢性、いずれの腰痛にも有効です。

▼抗鬱薬
鬱状態に対する効果のほか、痛みを抑える効果もあります。

▼抗てんかん薬
神経過敏を抑える薬で、神経由来の痛みに有効です。

▼オピオイド(医療用麻薬)
非常に強い痛みや難治性の痛みに使われます。 ただし、副作用や常用性の恐れがあるので、担当医の指導に従って正しく使用します。

認知行動療法が行える体制が整った医療機関は少ないのが現状です。 もし、長引く腰痛がストレスに関係していると思った場合は、「痛みがあるから何もできない」 「何もできないからさらにストレスがたまる」という悪循環を自分で断ち切るようにしましょう。 そのうえで、ウォーキングやエクササイズなどの運動をしたり、趣味や外出をしたりと、 できることから行動を起こし、ストレスの軽減を図ってください。