脊柱管狭窄症の自力ケア③
脊柱管狭窄症の患者さんを調べたら、間欠性跛行は100%、ふくらはぎ痛は64%、腰痛は59%に現れるとわかった。
■狭窄症の症状の出現率を調べた実態調査
以下は、ある整形外科医が5年間調査を行った結果です。
『私はこの5年間に1200人を超える腰部脊柱管狭窄症(以下、脊柱管狭窄症)の患者さんを診てきました。
その過程であることに気付きました。それは、脊柱管狭窄症のタイプに着目するより、症状の現れている部位や
症状そのものに注目して対処する方が、治療効果がずっと大きく、患者さんの満足度もはるかに高いということでした。
そして、脊柱管狭窄症の患者さんには、通り一遍のベルトコンベア式の治療よりも、一人一人に合う「部位別・症状別の
オーダーメイドの対処法が絶対に必要だという結論に至ったのです。
そこで私はまず、脊柱管狭窄症では具体的にどんな部位にどんな症状が現れているのかを正確につかむべく、
次の実態調査を行いました。
調査では、当クリニックを一定期間に受診した47~86歳の脊柱管狭窄症の患者さん126人(男性55人、女性77人)を対象に、
症状の現れ方を調べました。患者さんが訴えていた症状を①間欠性跛行②腰痛③ふくらはぎ痛④太もも痛⑤臀部痛⑥足裏のしびれ、
⑦排尿・排便障害⑧鬱の8項目に分けて、それぞれの出現率を集計したのです。』
●全ての患者さんに間欠性跛行があった
『その結果、126人の患者さんが例外なく訴えていたのが、脊柱管狭窄症で最も特徴的な症状である
①間欠性跛行(細切れにしか歩けなくなる症状)でした。間欠性跛行というのは、歩いているうちに脊柱管を通る神経や
血管が断続的に圧迫される結果、神経に炎症やむくみ、あるいは血流障害が生じて足腰の運動機能や感覚機能が低下し、
細切れにしか歩けなくなってしまう症状のこと。歩行中に足腰に痛みや痺れが生じて歩けなくなり、
前かがみになって脊柱管を広げて休めば、再び歩けるようになるのが特徴です。
脊柱管狭窄症で次に特徴的な症状といえば②腰痛ですが、腰痛の出現率は実はそれほど高くないことがわかり、
126人中74人(約59%)という結果でした。では、腰痛よりも多くの患者さんが訴えていた症状は何かといえば、
それは③ふくらはぎ痛でした。126人中81人(約64%)が、ふくらはぎの痛みや痺れに悩んでいることがわかったのです。
その他、④太もも痛は67人(約53%)⑤臀部痛は51人(約40%)⑥足裏のしびれは32人(約25%)という結果になりました。
膀胱や直腸の働きと関係が深い馬尾(脊髄の末端から馬の尻尾のように伸びている末梢神経の束)が障害されて発症する
⑦排尿・排便障害を訴えた患者さんも、6人(約15%)いました。
この結果を見るだけでもわかるように、脊柱管狭窄症の症状は決して単一ではなく、人によってさまざまな症状が 複雑に組み合わさって出現するため、その分治療が難しいのです。』
●鬱症状のある人が94%に達していた
『ところで、この実態調査を行う中で、私自身も非常に驚いたことがありました。それは、脊柱管狭窄症とは一見して
無縁に思える⑧鬱の症状を訴える患者さんが126人中118人と非常に多く、出現率が約94%に達していたことです。
足腰の痛みや痺れのせいで、外出する意欲をなくして家に引きこもりがちになってしまう人が少なかったのです。
また、「誰もこの辛い症状を理解してくれない」「このまま歩けなくなってしまうかもしれない」という、
周囲の無理解に悩み、自分の将来に不安を覚え、それが気持ちの落ち込みにつながっている場合が多いようでした。
気持ちが落ち込めば、自分の症状を把握し、自分に合う対処法を見つけて改善に努力しようという意欲もそがれてしまいます。
すると、症状が悪化の一途をたどる悪循環に陥りかねません。
そこで、次ページからは、前述した脊柱管狭窄症の①~⑧までの症状の一つ一つについて、
症状が現れる原因から改善に導く対処法まで、部位別・症状別に詳しく説明していきます。
まずは自分がどんな部位のどんな症状に悩んでいるのか、それを見極めましょう。
そして、その症状について詳しく紹介されている特集を読んでください。
いずれも、1200人の先輩の患者さんから教わり、私自身が確かな手ごたえを感じた対処法ばかりです。
そこで紹介されている自力ケア法を実践すれば、症状が改善に向かう可能性が大いに高まると考えられます。』