脊柱管狭窄症対策に『四つん這い体操』①
6割の人に現れる腰痛は、動作時の鈍痛が特徴だが、体幹筋強化の『四つん這い体操』で解消でき、再発なし。 脊柱管狭窄症の腰痛は背骨を支える体幹筋の衰えが主原因で、腰椎の狭窄部位の負担が増すため。
■脊柱管狭窄症の腰痛は動作時に現れやすい
以下は、某クリニック院長の施術談です。
腰部脊柱管狭窄症(以下、脊柱管狭窄症)の治療に欠かせない「部位別・症状別のオーダーメイドの対処法」を検討するに当たり、 当院を訪れる患者さんの実態調査を行った結果、腰痛を伴うケースは全体の約59%、つまり2人に1人以上の割合に達するとわかりました。 脊柱管狭窄症に伴って起こる腰痛は、ぎっくり腰や急性期の腰椎椎間板ヘルニアのような激しい痛みを感じるケースは少なく、 ズーンと響くような鈍痛であることが一般的です。また、安静にしているときにはそれほど痛みは感じられないものの、 座っている状態から立ち上がったり、歩きだしたりといった動作時に現れやすいのも特徴です。 状態を前に傾ける前かがみの姿勢を取ると、症状が和らぎやすい、と話す人も多くいます。
脊柱管狭窄症の腰痛を引き起こす大きな原因には、背骨を支える役割を担っている筋肉「体幹筋」 の衰えがあると、私は考えています。体幹筋とは、頭と手足を除いた胴体の中心部、つまり背骨や骨盤の周辺にある筋肉のことで、 「深層筋」「インナーマッスル」などの名前で呼ばれることもあります。 具体的には、背中の多裂筋や脊柱起立筋、腹部の腹横筋、骨盤内の大腰筋などが体幹筋に当てはまります。 私たちの体を家に例えると、背骨は大黒柱、骨盤はその柱を支える土台といえますが、体幹筋はこの柱が崩れないように支えたり、 土台を安定させたりするのに重要な役割を果たしているわけです。そのため、体幹筋が衰えれば、当然、背骨や骨盤に 悪影響が及びます。
●外出の機会が減ると体幹筋も衰える
人間の背骨は、もともと自然なS字カーブ(ナチュラルライン)を描いており、自分の体の重さや、
動くことで発生する衝撃をうまく分散しています。しかし、脊柱管狭窄症の患者さんでは背骨のS字カーブが
崩れてしまっている場合が多いのです。その理由は、そもそも脊柱管狭窄症の発症の大きな原因の一つとして、
長年の不良姿勢や加齢などによるS字カーブの崩れがあることがあることがあげられます。
また、脊柱管狭窄症の発症に伴って、症状が和らぐ前かがみ姿勢が定着してしまい、
S字カーブの崩れが助長されることも関係しています。
そこに体幹筋の衰えが加われば、背骨を支え、骨盤を安定させる力が失われ、S字カーブの崩れがさらに悪化します。
その結果、体重や衝撃がうまく分散できなくなり、腰椎(背骨の腰の部分)の狭窄部位に加わる負担が増して腰痛が起こるのです。
脊柱管狭窄症を患う人は、体幹筋が衰えやすい生活を送っているといえます。
足腰に痛みや痺れがあると外出が億劫になって家に閉じこもりがちになります。
体幹筋は立ったり歩いたりするときに働くので、外出の機会が少なくなれば体幹筋は使われなくなり、衰えてしまいます。
また、脊柱管狭窄症の患者さんが取りがちな前かがみ姿勢も、特にお腹側の体幹筋を衰えさせる大きな原因になります。
●無理な筋トレは症状の悪化を招く
脊柱管狭窄症の腰痛を改善に導くには、衰えた体幹筋を強めて背骨や骨盤を支える力を取り戻すことが肝心です。 体幹筋の筋力が戻れば背骨のS字カーブも徐々に回復し、腰椎の狭窄部位にかかる負担が減るため、 腰痛も和らいでいくというわけです。 一般に、腰痛の改善には、腹筋と背筋の強化が重要といわれます。しかし、腹筋や背筋は曲げたり伸ばしたりする動きが 得意な筋肉で、背骨を支えるのにはあまり役に立ちません。脊柱管狭窄症の腰椎を正すには、腹筋や背筋など表面にある 浅層筋を強める以上に、深層にある体幹筋を強めることが重要なのです。
さて、ここで問題となるのが、「どのようにして体幹筋を強めるのか」ということです。 足腰の痛みや痺れを伴う脊柱管狭窄症の患者さんでは、腹筋運動や背筋運動などの一般的な筋トレを行うのは難しいものです。 また、やり方によっては、症状を悪化させてしまう危険もあります。 そこで、私がお勧めするのが、脊柱管狭窄症の患者さんでも安全に簡単に行える『四つん這い体操』です。 次ページで詳しく紹介していきましょう。