認知症の介護『着衣にかかわる問題』



■季節に合った服を選べない

アルツハイマー病では、ある程度進行すると、季節に対応した適切な服を選べなくなる状態が生じます。 「寒いのに薄着」という場合もありますが、真夏に長袖の服を4枚も5枚も重ね着する「暑いのに厚着」 というパターンのほうが目立ちます。 何枚も着込んで汗びっしょりの人もいますが、意外に涼しい顔の人もいるので、温熱感覚の自律神経機能が 障害されていることがかかわっているのかもしれません。 いずれにしても、あまり着込みすぎると体温調節がうまくできないほか、動きにくくなって転倒する危険性もあります。 着込むことを頭ごなしに否定せず、「この服のほうが似合いますよ」などと、適切な服を着るように勧めてみましょう。


■着かえない

認知症では、季節にあった服装を選べなくなるとともに、着替えをしたがらなくなってきます。 清潔の概念が薄れることに加え、環境が変化することを嫌うこともかかわっているのかもしれません。 さらに、服を着る行為そのものができなくなっています。最初は、ボタンを掛け違えたりする程度ですが、 裏表を逆に来たり、やがて、着方が全く分からなくなってしまいます。 できる限り自分で来てもらえるよう裏表が分かりやすい服や、ボタンが少ない服を選んだりするとよいでしょう。 また、新しい服を気に入らず、着なれた服を毎日着続けることもあります。 いつも来ている服だと、安心感が得られるのかもしれません。 お気に入りの服がある場合には、同じものを複数用意しておくのも、清潔を保つうえで1つの方法でしょう。