物忘れ・ボケ防止によい食品「大豆」

脳の約50%はリン脂質という脂肪の一種でできており、特に神経細胞の膜の主成分がリン脂質です。 大豆セリンはリン脂質の中でも神経細胞にとって重要な成分で、脳の神経細胞の膜をしっかりと作り、神経細胞の働きを高めたり、 脳の神経細胞の膜を補強したり、修復したりして、神経細胞同士の情報交換をスムーズにしたります。 大豆セリンを摂った実験では、記憶力が平均12歳若返り、軽いボケの人はほぼ全員回復しました。


■ホスファチチジルセリン(大豆セリン)

大豆は今注目の脳若返り栄養の宝庫

食品の中でも、脳を若返らせる栄養素の宝庫として、評価の高まっているのが「大豆」です。 大豆には、ビタミンB群やミネラルの一種であるカルシウムといった脳にとって必須の栄養素が豊富。 さらに、大豆のたんぱく質には、脳の細胞の働きに役立つグルタミン酸やアミノ酸が大量に含まれています。 特に、見逃せないのが大豆に含まれる「レシチン」。 大豆レシチンはリン脂質の一つで、脳の働きを高める優れた働きがあると考えられます。 大豆レシチンは、ブレインフーズ(頭をよくする食品)として知られるようになり、 自閉症の予防や治療にも効果があるようです。

このように、大豆には脳の若返り栄養が詰まっていますが、その中でも今注目を集めているのが、 「ホスファチチジルセリン(大豆セリン)」という成分です。 ホスファチチジルセリンは、ほとんどの動植物に微量ながら含まれていますが、比較的多く含まれているのが大豆です。 大豆セリンは、大豆レシチンと同じリン脂質の一種。リン脂質は、脳に必要な栄養素の中でも最も重要といえるでしょう。 なぜなら、私たちの脳の約50%(乾燥重量中)がリン脂質でできており、特に神経細胞の膜の主成分がリン脂質だからです。 神経細胞の膜は、細胞へのエネルギーの供給や細胞同士の情報交換で重要な役割を担っています。 もしリン脂質が不足すれば、神経細胞の膜の活動が低下し、脳内での情報交換も停滞します。 リン脂質にはいくつかの種類がありますが、とりわけ、脳にとって大切な働きをしているのが大豆セリン。 大豆セリンは、神経細胞の膜をしっかりと作るため、細胞内にブドウ糖を取り込んでエネルギーに変えることや、 神経細胞の働きを高めることに役立ちます。そのほか、大豆セリンは、神経細胞の膜が正常に働くように補強したり、 修復したりします。それによって、神経同士の情報交換をスムーズにする役割もあるのです。

このように、大豆セリンは、脳の働きを左右する成分といっても過言ではありません。 大豆セリンを補給すれば、海馬を含む脳の活動が活発になり、物忘れを防いだり、 記憶力や思考力を高めたりすることが期待できます。 実際に、大豆セリンが記憶力を向上させたり、重い認知症(ボケ)を改善したりする効果を確かめた研究もあります。


●大豆セリンの有効実験

認知症の人の8割が改善した

「大豆セリン」によって脳の働きが高まることを確かめた研究があります。
米国ヴァンデビルト大学のクルーク博士らは、大豆セリンが記憶力アップに有効であることを臨床試験によって 証明しています。この試験では、記憶力の衰えを自覚している50~75歳の57人(平均年齢64.3歳)に、 毎日300mgの大豆セリンを12週間摂ってもらいました。そして、大豆セリンの摂取前と摂取後に、 初めて見る人の名前と顔を覚えるというテストを行ったのです。 すると、大豆セリンを摂る前の記憶力は、平均で64歳の人と同じでした。 ところが、大豆セリンを摂った後の記憶力は、平均で52歳の人の水準にまで回復していたそうです。 つまり、記憶力が平均12歳分も若返ったことになります。

兵庫県にある尼崎中央病院の臨床試験では、大豆セリンが認知症(ボケ)を改善することがわかりました。 この試験では、老年性、または脳血管性の認知症と診断された患者さん7人(79~99歳)に、 1日300mgの大豆セリンを8週間摂ってもらいました。 そして、摂取前と摂取開始から2週間後、4週間後、8週間後の4回、知能テストを行ったのです。 このテストでは、21点以上が正常、20~11点が軽度の認知症、10点以下が重度の認知症と見なされます。 その結果、テストの平均点は、軽度の認知症の人が摂取前に12.5点だったのが、2週間後に23点になりました。 一方、重度の認知症の人は摂取前に5.2点だったのが、2週間後に8点、4週間後に9.5点となりました。 そして、全体の8割の人に成績アップが見られ、軽度の認知症の人はほぼ全員が正常になったのです。

大阪市立大学医学部でも、認知症と診断された患者さん28人(52歳~89歳)に毎日、大豆セリン300mgを摂ってもらいました。 そして、尼崎中央病院の臨床試験と同じ知能テストを受けてもらったところ、摂取前に約17.4点だった平均点が、 6週間後には約21.5点と正常になったのです。


●1日に摂取する大豆セリンの必要量

これまでの研究によれば、脳の働きを改善するには1日300mg、脳の老化を防ぐには1日50~200mgの大豆セリンを摂るのが 目安とされています。ただし、大豆セリンの必要量を食事で摂るのは難しいでしょう。 その理由は、例えば大豆から300mgの大豆セリンを摂るには、約15kgもの大豆を食べなければならないからです。 そこで、大豆セリンは、サプリメントで摂ることが薦められます。


■関連項目