ボケ防止・物忘れに「DHA」
『DHA』は、青魚に多く含まれる多価不飽和脂肪酸で、 近年、脳を若返らせて物忘れを治すとされ、ボケ防止・記憶力向上等によい成分として脚光を浴びています。 例えば、DHAは、脳の神経細胞の細胞膜を柔軟にしたり、神経同士の情報交換をスムーズにしたりして、 記憶力や判断力、理解力などを高めます。また、DHAには、脳の血流を増やす働きもあります。 最近では、DHAが脳の神経細胞を増やすことも島根大学医学部の実験で明らかになりました。 DHAは、計算力や判断力を高める効力が絶大で、DHAを多く摂る地域では東大生や学者が続出しています。
■「DHA」とは?
DHAは脳に最も多い
近年、魚が脳の働きを高めることが、広く知られるようになりました。 実は、脳の働きを高める魚の効果を世界で最初に指摘したのは、英国のクロフォード博士でした。 博士は1989年、「日本の子供の知能指数が高い理由の一つは、魚をよく食べる習慣である」 という学説を発表したのです。今では、魚は脳を若返らせる食品として海外でも注目の的。 世界中で魚の消費量が増えているのも、その影響が大きいと見られています。
魚のさまざまな栄養の中でも、脳の若返り効果が絶大として脚光を浴びているのが、魚油に多く含まれる 『DHA(ドコサヘキサエン酸)』です。 DHAは不飽和脂肪酸という脂肪酸の一種。 脳内に直接入ることのできる数少ない成分の一つとしても知られています。 全身の司令塔である脳は、人間の体の中でも特に重要な器官です。 それだけに、どんな栄養でも脳内に入っていけるというわけではありません。 脳には、有害な物質が侵入しないように、「血液脳関門」という、脳を守るための関所があり、 血液によって運ばれてきた栄養のうち、脳に必要なものだけが通過できる仕組みになっています。 そしてDHAは、この血液脳関門を通過して脳内に入ることのできる、数少ない物質の一つなのです。 血液脳関門を通過したDHAは海馬に吸収され、そこで脳神経細胞の柔軟性を高め、 情報伝達の送受信アンテナである「シナプス」(神経細胞の接続部)の働きを活発にします。 人の脳にある数百億もの神経細胞は、老化によって減少していきます。しかし、DHAによってシナプスの働きが 活発になれば、老化で脳神経細胞の総数が減ったとしても、脳の働きの低下を最小限に抑えることができる というわけです。 つまり、DHAは、脳にとって極めて重要な成分といえるのです。
脳にとってDHAがいかに重要な成分であるかは、人体における分布を見れば一目瞭然。 人間をはじめとする陸上動物の脳では、DHAは目や心臓などの限られた器官にしか分布していませんが、 最も多く分布しているのが脳。脳の約50%は、リン脂質でできており、脳のリン脂質には平均10%のDHAが含まれています。 とりわけ、脳の「海馬」という部位のリン脂質には20~25%以上のDHAが含まれています。 ところが、スウェーデンのある調査によれば、80歳前後のお年寄りの海馬には、DHAが平均16.9%含まれ、 その量は少なくなっていました。さらに、アルツハイマー型認知症の患者の場合は、DHAは平均7.9%まで 大幅に低下していたのです。この結果から、海馬でのDHAの減少が、脳の老化に深くかかわっているということが 考えられます。 海馬はいわば記憶の働きを担う主役。この事実だけでも、DHAが記憶の働きに欠かせないことがわかります。
●DHAの働き
脳を若返らせるさまざまな働きがある
DHAには、脳を若返らせるさまざまな働きがあります。
例えば、DHAは、脳の神経細胞の細胞膜を柔軟にしたり、神経同士の情報交換をスムーズにしたりして、
記憶力や判断力、理解力などを高めます。DHAには、脳の血流を増やす働きもあります。
最近では、DHAが脳の神経細胞を増やすことも島根大学医学部の実験で明らかになりました。
神経細胞は、これまでの医学では再生しないと考えられてきましたが、
実は年を取ってからも増えることがわかっています。
実験では、DHAを7週間与えたネズミは、DHAを与えなかったネズミに比べ、
海馬の神経細胞のシナプスが約6割も増えました。
シナプスが増えたことは、脳内での情報交換が活発になったことを示しています。
さらに、ネズミの脳を取り出してDHAを加えたところ、海馬の神経細胞を再生する働きが約1.5倍に高まったのです。
●認知症予防にDHA
アルツハイマー病の危険度が7割も減少
さらに、最近ではDHAが認知症(ボケ)の改善にも効果を発揮することが明らかになりました。 米国カリフォルニア大学アーバイン校のラフェルラ博士らは、DHAがアルツハイマー型認知症の予防に役立つことを 実験で確かめました。ネズミにDHAを9ヶ月与えたところ、DHAを与えなかったネズミより、 「神経線維変化」と「β-アミロイド」が大幅に減ったのです。 神経線維変化とは、神経細胞の老化によって脳内にできるゴミのようなもの。 β-アミロイドは脳の働きを妨げる物質で、どちらもアルツハイマー病を引き起こすと考えられています。 つまり、DHAは、アルツハイマー病の原因物質ができるのを抑えるというわけです。
オランダのカルミーン博士らは、認知症でない55歳以上の約5400人について、平均約2年間の追跡調査を行いました。 その結果、魚を1日18.6g以上食べた人は、魚を1日3g以下しか食べなかった人に比べ、認知症になる危険度が 6割も減ったのです。アルツハイマー病になる危険度に限ってはなんと7割も減りました。 この調査による効果については、日本神経学会も認めているほどです。
一方、米国のモリス博士らは、65歳以上の約800人を、平均約4年間追跡調査しました。 すると、DHAを1日平均0.1g摂った人は、1日平均0.03gしか摂らなかった人より、 アルツハイマー病になる危険度が7割も減りました。
群馬大学医学部では、アルツハイマー病の患者さん5人、脳血管性認知症の患者さん13人にDHAを6ヶ月間摂ってもらう 実験を行いました。DHAの摂取前と摂取後に知能テストを行ったところ、 アルツハイマー病の人は全員、脳血管性認知症の人は10人が明らかに改善していたのです。
このように、脳にDHAを補給すれば、脳の老化ばかりか、認知症を予防・改善する効力が抜群です。
●DHAの具体的な効果
カツオの頭を食べていた
鹿児島県の南部にある奄美大島に「秀才村」というべき小さな村があることをご存知でしょうか。 この村は正式には大和村今里地区といいます。今里地区は人口が少ないにもかかわらず、高学歴の人を驚くほど輩出しています。 東京大学の卒業生も珍しくありません。出身者の中には、大学教授や医師、会社社長なども大勢います。 しかも村には長寿の人が多く、認知症(ボケ)が少ないのです。 1991年にある調査が行われた結果、今里地区に秀才が多い秘密は、DHAの大量摂取であることがわかりました。 今里地区では戦前からカツオ漁が盛んで、カツオの頭を丸ごと食べる「ビンタ料理」という郷土料理を ふだんからよく食べていました。昔、今里地区の住民は、カツオの身の部分を生計のために売り、 残った頭を食べていました。その習慣がビンタ料理として受け継がれたのです。 魚の中でも、カツオにはDHAが豊富に含まれていますが、特に目の後ろにある眼窩脂肪はDHAの宝庫。 今里地区の人たちは、その部分も食べていたのです。さらに今では、カツオの身も、カツオ以外の魚もよく食べています。 その結果、今里地区の人たちは、DHAの摂取量が激増し、脳の働きも大幅に向上したものと考えられます。
◆DHAを摂った子供は知能指数が高かった
DHAが脳のさまざまな働きを高めることは、これまでの研究によって明らかにされています。 臨床研究で最もよく知られているのは、英国ケンブリッジ大学のルーカス博士らの実験でしょう。 DHAは、母乳には必ず含まれていますが、ふつうのミルクには含まれていません。 そこで、ルーカス博士らは、300人の子供を母乳で育てるグループと粉ミルクで育てるグループに分けました。 そして、8歳になったときの知能指数を比べてみたのです。 すると、知能指数は母乳で育てた子供が平均103.0(中間値は100)だったのに対して、 粉ミルクで育てた子供が平均92.8でした。つまり、DHAを摂った子供の方が、知能指数が10ポイント以上高かったというわけです。 群馬大学医学部では、脳血管性認知症の患者さん13人(平均年齢78.8歳)にDHAを6ヶ月間、毎日摂ってもらう実験を行いました。 そして、知能テストを行ったところ、DHAの摂取後は、計算力や判断力の成績が、摂取前よりも上がったのです。 食品総合研究所の鈴木平光博士らも、認知症でない人を含むお年寄り30人(平均年齢77.8歳)に、 DHAを6ヶ月間毎日摂ってもらう実験を行っています。その結果、記憶力や計算力を測る知能テストで、 成績を大幅にアップさせた人が続出しました。
●効率的にDHAを摂る方法
青背の魚に豊富なDHA
DHAは、人間の体内でもα-リノレン酸を原料として合成することができます。 しかし、体内ではそれほど大量には作られないので、食べ物で補うことも大切です。 DHAを手軽に補うのであれば、魚を食べ、魚油をとることが一番。 なぜなら、魚にはDHAがそのままの形で含まれているからです。 魚の中でもDHAを最も豊富に含んでいるのは、マグロ、カツオ、サバ、サンマ、イワシ、アジといった青背の魚。 このほか、ニジマスやサケなどにも、DHAがたっぷりと含まれ、サケの卵であるイクラやスジコなどにもDHAが豊富。 魚以外では、クジラ、オットセイ、アザラシなど、海に生息する哺乳類の脂身にも、DHAは豊富に含まれています。
脳の若さを保つためであれば、DHAの摂取量は1日1.0~1.5gが目安。 青背の魚の中でも、DHAが断然多いのは、マグロの脂身、いわゆる「中トロ」の部分や、 マグロの目の後ろにある眼窩脂肪に大量に含まれています。 マグロの脂身100g中に含まれるDHAとEPAの総量は約4.6g。これはマイワシの2倍、アジの7倍にも相当します。 したがって、マグロを食べる場合は、中トロであれば刺身で2切れ食べれば、健康を保つために必要な量のDHAを 補うことができるでしょう。 ちなみに、煮たり焼いたりしても、DHAの量はそれほど変わりません。 しかし、煮たり焼いたりすれば、それによって油が落ちてしまいます。 それを考えれば、刺身で食べるのが最適です。 眼窩脂肪は、そぎ落として「ネギトロ」にすれば、食べやすくなるでしょう。
◆旬の魚はDHAが数倍に増える
最近では、日本人の長寿の秘訣が魚の多食にあるということを知り、世界各国の人たちが刺身を食べるようになりました。 そんなこともあって、マグロはさらに高価な食べ物になってしまったかような印象があります。 そこで、マグロ以外の魚からDHAを補うのであれば、ブリやサンマ、サバといった青背の魚がお勧め。 ブリなら切り身1切れ、サバなら半身、サンマなら1尾を目安にするといいでしょう。 どの魚を選ぶにしても、旬の魚を摂るようにすれば、DHAを効率よく補うことができます。 なぜなら、旬の魚なら、DHAの量がふだんの数倍も増えるからです。 マグロやブリは冬、カツオは夏、サバは秋から冬、サンマは秋が旬。 こういった旬の魚をうまく生活に取り入れるようにすれば、DHAを効率よく補うことができるというわけです。 旬に関係なく、養殖ものを利用するのも悪くありません。よく脂が乗っており、DHAが豊富に含まれているからです。 値段も手ごろなので、養殖ものを上手に取り入れるのもいいでしょう。
●体験談
●サプリメントで補う
DHAは、魚から補うことが一番なのですが、魚が嫌いだったり、調理をするのが面倒だったりする人も多いかと 思います。そのような人は、サプリメントを利用するのも一つの方法です。 サプリメントには、DHAが凝縮されているので、ごく少量摂るだけで必要量を摂取することもでき便利です。
【関連項目】:『DHA関連製品』