記憶力向上によい飲料「コーヒー・お茶」
最近の研究で、カフェインの摂取によって 記憶力が向上する仕組みが明らかになりました。 記憶は、脳の神経細胞が変化して、信号が伝わりやすくなることで作られると考えられ、 神経細胞の変化には、カルシウム濃度が関わっています。 実験でネズミの脳の神経細胞内のカルシウム濃度を調節する「リンアノジン受容体」をカフェインで刺激すると、 細胞内のカルシウム濃度が上がり、記憶を作る信号が伝わりやすくなることが確認されました。
■コーヒーやお茶で記憶力が高まる
カフェインが記憶力アップに深く関わっている
コーヒーやお茶(緑茶・紅茶・ウーロン茶など)は、苦味成分である「カフェイン」が豊富な飲み物です。 コーヒー1杯(約150ml)には、約60gのカフェインが含まれています。 コーヒーや濃いお茶を飲むと頭がさえる、という人は少なくないでしょう。 カフェインは、体内に取り込まれると、血流に乗って脳に届きます。 そして、自律神経のうちの交感神経を刺激して、集中力や運動能力を高めたりするといわれてきました。
そうした中、近年、コーヒーや茶をよく飲む人は記憶力が高い、という研究結果が発表されました。 フランスの国立医学研究機関の研究チームは、フランス国内に住む男女7000人以上を対象として、 飲食習慣についての質問を行うと共に、カフェインの体に及ぼす影響を調べたのです。 その結果、1日に3杯以上のコーヒーもしくは同量のカフェインを含む茶を飲む女性は、 1日に1杯しか飲まない女性に比べて、4年間で言語の低下率が33%、視覚的・空間的な記憶の低下率が 18%も抑えられることがわかりました(男性では有意な差が現れませんでした)。 また、高齢になるほど記憶力の低下を顕著に抑えたことも、同時に報告されています。
この試験結果から、コーヒーや茶を飲めば記憶力を保てることがわかりますが、その理由についてはまだ不明な点が多いようです。 しかし、最近、北海道大学の神谷温之教授らが行った動物実験で、カフェインの摂取によって 記憶しやすくなる仕組みが明らかになりました。 記憶は、脳の神経細胞が変化して、信号が伝わりやすくなることで作られる、と考えられています。 神経細胞の変化には、カルシウム濃度が関わっています。 神谷教授らは、脳の神経細胞内のカルシウム濃度を調節する「リンアノジン受容体」と呼ばれるたんぱく質に注目。 ねずみの脳にあるリアノジン受容体をカフェインで刺激すると、細胞内のカルシウム濃度が上がり、 記憶を作る信号が伝わりやすくなることを確認したのです。
これらの実験結果から、カフェインは記憶力アップに深く関わっていることがわかり、 現在、記憶障害や認知症を改善させる薬にカフェインを応用する研究が進められています。 なお、これまでの研究結果から見て、カフェインを摂るなら無糖のコーヒーや紅茶で1日3杯、 緑茶なら1日6杯を目安に飲んでください。 ただし、カフェインは神経を興奮させるので、妊婦や不眠症の人、子供は摂りすぎに注意が必要です。