■青魚を常食する

脳の血流不足がボケを招く原因

前記のように認知症(ボケ)にはアルツハイマー型と脳血管性の2種類がありますが、 共通して見られるのは脳の血管の老化です。 アルツハイマー病になると、脳の大脳皮質に老人班と呼ばれるシミができ、脳が萎縮してしまいます。 老人班の正体は、βアミロイドと呼ばれるたんぱく質で、これが沈着した脳の神経細胞は死滅してしまうのです。 これまでの研究から、 「動脈硬化」 が進んで脳の血流が悪化すると、脳内に老人班ができやすくなることがわかっています。 一方、脳血管性の認知症も、動脈硬化によって血管壁に悪玉コレステロールや中性脂肪の蓄積することが発症の原因です。 つまり、アルツハイマー病も脳血管性認知症も、脳の血流不足によって神経細胞が障害を起こす病気だといえます。 そこで、認知症を防ぐには、脳の血流不足と神経細胞の損傷を食い止めることが大切になりますが、 その鍵になるのは日ごろの食生活の改善です。


●魚を食べない人ほどボケやすいと判明

まず、注意すべきことは、脂肪の摂り方です。これまでの国内外の調査によれば、肉やバターなどの 飽和脂肪酸を大量に摂る人ほどアルツハイマー病になる危険度が高く、魚油やオリーブ油、ゴマ油、ナタネ油などの 脂肪は、逆に危険度を減らすことが報告されています。 飽和脂肪酸は、私たちの体内で固まりやすい性質があり、血液中でドロドロの状態になって動脈硬化を引き起こします。 反対に魚油は体内で固まりにくい性質を備えています。しかも、サバ・アジ・イワシ・サンマなどの青背の魚には、 DHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(エイコサペンタエン酸)といった脂肪酸が豊富に含まれています。 DHAやEPAは、血液をサラサラにして動脈硬化や血栓ができるのを防ぎます。 また、DHAは脳の神経細胞に蓄えられ、神経細胞の柔軟性を高めたり、傷ついた神経細胞を修復したりして、 脳内の情報伝達を活発にします。 実際、アルツハイマー病の患者さんの脳を調べるとDHAが少なくなっていることが確認されています。 また、魚を食べる回数が多い人ほど、アルツハイマー病を発症する危険度が減ることも確認されています。

●魚油摂取の適量

認知症の予防を目的に魚油を摂る場合は、1日あたり2g程度を摂ることが奨められ、サバなら1切れ、アジの開きは1尾、 イワシは1~2尾、サンマは1尾が目安になります。魚油を余すところなく摂るには刺身にして食べるのが一番ですが、 魚を焼く場合は、焼き網に油が落ちてしまうため、魚をホイルに包むといいでしょう。


ただし、脳の健康には適度な肉食も欠かせません。例えば、神経細胞を活性化させる脳内ホルモンにセロトニンがあります。 セロトニンは、肉や赤みの魚に含まれるトリプトファンというアミノ酸から作られ、不足すると鬱や認知症などを 引き起こしやすくなります。また、肉にはアラキドン酸という脂肪も含まれており、これから作られる ナンダマイトという物質(至福物質)は、脳に幸福感をもたらして不安感やストレスを和らげるほか、 記憶力の向上にも関わっています。つまり、脳の健康を守る食生活の秘訣は、魚を中心にして肉も適度に摂る ことだといえるでしょう。

【関連項目】
『オメガ3(n-3系脂肪酸)』
『DHA』
『DHA人気定番製品』