加齢黄斑変性症の治療
『加齢黄斑変性』の治療では、病変が黄斑部の「中心窩」にあるのか、離れた位置にあるのかが問題になります。 視力を大きく左右する部位だけに、慎重に治療が行われます。 「滲出型」で、病変が中心窩から離れている場合は「レーザー治療」 「滲出型」で、病変が中心窩にある場合は、「PDT(光線力学療法)」が現在の主流です。 また、「萎縮型」の場合は、「経過観察」が行われます。
■PDT(光線力学療法)
薬を使い、特別なレーザーで新生血管だけを破壊する
2004年に健康保険の適用が認められた、滲出型の新しい治療法です。
●「PDT(光線力学療法)とは?
特別なレーザーに反応する「光感受性物質」を利用して、新生血管を内側から壊す方法です。 PDTで用いられるレーザーは通常のレーザーと異なり、熱をほとんど発生しません。 周辺組織に与えるダメージが少なく、新生血管が中心窩にある場合に適しています。 新生血管が中心窩にある場合、以前は手術療法がよく行われていましたが、現在はPDTが主流になっています。 ただし、PDTを受けられる施設は限られています。
●治療の手順
散瞳薬を点眼し「ベルテポルフィン」という光感受性のある薬を、腕の静脈から点滴注射します。
ベルテポルフィンには、新生血管だけに集まりやすい性質があるため、新生血管に集中的に取り込まれます。
正常な血管には、ほとんど取り込まれません。
次に、新生血管に特別なレーザーを照射します。すると新生血管に取り込まれたベルテポルフィンが刺激され、
化学反応を起こします。毒性の強い「活性酸素」が発生し、新生血管の内部を障害して、最終的に血管を詰まらせます。
●治療の流れ
治療後は、3ヶ月ごとに定期検査を行い、新生血管の状態をチェックする必要があります。 「蛍光眼底造影」を行って、造影剤が新生血管から漏れているときは、 以前として新生血管が活動していることを示しています。 その場合は、漏れている新生血管に再度PDTを行います。 1回のPDTで新生血管が完全に閉塞することは少なく、通常は数回程度治療を行う必要があります。 また、ベルテポルフィンは、レーザー以外の強い光にも反応します。 初回の治療の際は、日光などの強い光を避けるために、2日間の入院が必要です。 2回目の治療からは、通院して治療を受けることができます。
●治療後は日光を避ける
PDTは、重篤な副作用の少ない治療法ですが、治療の直後に日光やハロゲンランプのような強い光に当たると、
「光線過敏症」を起こす可能性があります。一旦光線過敏症になると、光りに当たるたびに、強いかゆみを伴う
「皮疹」ができるようになります。
光線過敏症を防ぐためには、治療の直後に光に当たらないようにします。外来で治療を受けて帰宅する際は、
帽子とサングラス、手袋を使い、夏でも長袖のシャツと長ズボンを着用しましょう。
また、まれに治療後に視力が低下することがあります。そのため、0.6以上の視力が保たれている場合は、
原則としてPDTは行われません。