黄斑変性症の予防に「亜鉛」
今まで日本人に少なかった『黄斑変性症』が最近10年間で数十倍に増え、 本も読めないほど程度がひどい人が続出しています。 物がゆがんで見える難病「黄斑変性症」を予防するには、亜鉛を摂ることが有効です。
■「黄斑変性症」とは?
物がゆがんで見えたら要注意
年を取ると、視野の中心部がゆがんだり、欠けたりして見え、本などが読めなくなることがあります。 そんな場合は、『加齢黄斑変性症』という病気を心配した方がいいかもしれません。 黄斑変性症は、網膜という物を見る上で最も重要な器官の中心にある、「黄斑」 という部分の異常によって起こります。具体的な症状としては、視野の中心がゆがんだり欠けたりして見えます。 視野の中心部が暗くなったりもします。そしてしだいに視力が下がり、最悪の場合には失明にいたることも 少なくありません。黄斑変性症の患者の失明率は、糖尿病網膜症や緑内障の患者の失明率に続いているのです。
【詳細】:『黄斑変性症』
●黄斑変性症の原因
活性酸素の大量発生が重大原因
黄斑変性症は、網膜の中心部にある黄班という部分に、網膜の老化によってできた老廃物がたまって、 網膜が萎縮したり急ごしらえの血管(新生血管)ができたりすることで起こります。 この老廃物がたまる重大原因に、「活性酸素」の大量発生による酸化があります。 活性酸素は、紫外線によって大量に発生します。強い紫外線を長時間浴び続けると、それによって、 活性酸素が大量に発生するのです。特に目は、皮膚などに守られたほかの部位と違い、 目そのものが外にむき出しになっています。そのため、紫外線の害を受けやすいのです。 網膜に老廃物がたまるのを防ぐには、活性酸素の害を取り除かなければなりません。 そこで重要になるのが、食事によるビタミンやミネラルの補給です。
●亜鉛不足
食生活の欧米化で亜鉛不足に
私たち日本人は、古くから自然の恵みを巧みに取り入れた食生活を営み続けてきました。 その結果、野菜や海藻・果物などからビタミンやミネラルなどの抗酸化力の強い栄養を豊富に取り入れてきたのです。 ところが、最近になって私たちの食生活は急激に変化しました。 食事が欧米化し、ファストフードなどの加工食品を利用することが増えています。 その反面、野菜や海藻・果物を摂る機会は減っています。 こうした食生活の変化によって、脂肪やたんぱく質などを豊富に摂るようになったものの、 野菜や海藻・果物から摂れるビタミンやミネラルが不足しがちになったのです。
中でも、特に深刻なのが、ミネラルの一種である「亜鉛」の不足。 亜鉛には、網膜を若々しく保つ働きと共に、活性酸素の消去を強力に促す働きがあります。 実は亜鉛は、加工食品を摂りすぎると不足しやすい栄養なのです。 加工食品には、食品添加物が大量に使われています。食品添加物の中には、体内で亜鉛の吸収を妨げる働きをする ものがあるのです。そのため、加工食品を摂りすぎれば、亜鉛が不足することに直結するのです。
●亜鉛の働き
亜鉛には物を見る網膜を修復する働きがあり、
米国の調査では黄斑変性症を見事に防いだ
前述したように、黄斑変性症を防ぐには、食生活を改善し、不足しがちなビタミンやミネラルを補うのが肝心。 中でも重要なのが、亜鉛を摂取することです。では、亜鉛は黄斑変性症をどのように防ぐのでしょうか。
亜鉛には、細胞の新陳代謝を促す働きがあります。そのため、目の網膜の細胞の新陳代謝も活発に行われるわけです。 黄斑変性症を招く重大原因の一つには、網膜にある黄班という部分の細胞が老化し、老廃物ができることがあげられます。 網膜の新陳代謝が活発になれば網膜が若返り、当然こうした老廃物ができにくくなるわけです。 つまり、簡単にいえば、亜鉛が網膜を修復してくれるといえるでしょう。 もっといえば、亜鉛は網膜の生まれ変わりにとって最も重要な栄養の一つなのです。 さらに、亜鉛には、やはり網膜の細胞の新陳代謝を活発にするビタミンAを助ける働きもあります。 そのため、網膜の細胞の若返りが一段と促されるわけです。 亜鉛には、私たちの体内に備わる「SOD」(スーパーオキシド・ディスムターゼ)と呼ばれる 強力な抗酸化力を持つ酵素の働きを活発にする作用もあります。 つまり、紫外線による網膜の酸化を防いでくれるというわけです。
◆調査でわかった亜鉛と黄斑変性症の関係
こうした亜鉛の働きは、すでにさまざまな研究で実証されています。 例えば、黄斑変性症が失明率のトップを占める米国では、3640人を対象に大規模な臨床試験が行われています。 その試験では、β-カロテンやビタミンC・Eなどの抗酸化物質、それに亜鉛を摂取してもらい、 6年以上の歳月をかけて、黄斑変性症に対する効果を調べているのです。 その結果、亜鉛と抗酸化物質を摂取したグループは、黄斑変性症の発病率を有意に抑えられたのです。 日本でも、日本大学医学部附属駿河台病院眼科を受診した黄斑変性症の患者35人と、一般健常者65人の血液を採取して、 その亜鉛の濃度を比較しています。血液中の亜鉛の濃度によって、体内に亜鉛が不足しているかどうかが ある程度わかるわけです。その結果、黄斑変性症の患者は一般健常者に比べて、 血液中の亜鉛濃度が20%近くも低いことがわかったのです。
●亜鉛の摂取方法
亜鉛は、牡蠣や豚レバー、ゴマに豊富で、
手軽に摂るなら抹茶を水に溶いて1日2杯飲む
市販のサプリメントでもOK
これまで述べてきたように、黄斑変性症を予防するには、ビタミンやミネラルを積極的に取ることが肝心。 中でも、ミネラルの亜鉛を摂ることが特に大切になります。 では、亜鉛をうまく体内に取り入れるためには、どんな食品を利用すればいいのでしょうか。 私たちが利用している日常食品の中で、最も豊富に亜鉛を含んでいるのは何といっても「牡蠣」でしょう。 亜鉛の必要摂取量は1日15mgといわれています。牡蠣には、100g当たりなんと13.5mgもの亜鉛が含まれています。 おおざっぱにいえば、ふつうの大きさの牡蠣を4~5個ほど食べれば、1日の必要量が補えるでしょう。 ちなみに亜鉛は、ビタミンCと一緒に補えば体内での吸収がよくなります。 牡蠣を摂るときには、レモンを絞って一緒に摂るといいでしょう。 小魚やゴマ、アーモンド、黄な粉、うなぎ、豚レバーなどにも、亜鉛は豊富に含まれています。 牡蠣のほかに、これらの食品も食生活の中でうまく摂るようにしましょう。 緑茶にも、亜鉛が多く含まれています。しかし、ふつうに煎じて飲むと、残った茶殻に亜鉛の多くが残ってしまいます。 そこでおススメしたいのが、茶葉を丸ごと砕いて摂れる抹茶や粉茶。 この場合には、それぞれ1日2杯も飲めば、体に必要な亜鉛を補えるでしょう。
最近では、亜鉛のサプリメントも市販されていて、簡単に手に入ります。
毎日手軽に亜鉛を摂りたいという人は、こういった亜鉛のサプリメントを利用してもいいでしょう。